一日中元気な「ヒバリ型」、午後から調子が上がる「フクロウ型」

朝が苦手、午前中ぼーっとする…実は「フクロウ型」体質?
               漢方医療で改善、医療センターの取り組み]

(西日本新聞  2019年5月8日)

今年の大型連休は長い人で休みが10日も続いただけに、連休明けに学校や
会社に行くのを憂鬱に感じる人もいるだろう。

朝起きるのが苦手で、午前中はぼーっとする-。
そんな悩みがあれば、実は体質が原因かもしれない。
久留米大医療センター(福岡県久留米市)が開設している「フクロウ外来」
は、朝が苦手な体質を改善する漢方医療に取り組んでいる。

医療センターの一角に設けられたフクロウ外来。
さまざまな生薬のサンプルが並ぶ診察室で、漢方医学を専攻する精神科医の
恵紙(えがみ)英昭教授が開口一番に切り出した。
「実は私も学生時代、朝はよく起きられなかったんですよ」

小中学校時代から遅刻しがちだった。
高校では敷地内にある寮に入り、始業5分前まで寝ていたという。
午後から調子が出るタイプだったため、大学では徹夜で勉強し、そのまま
寝ずに午前中のテストを受けに行くこともあった。

医師になって3年目、
体質を心配した先輩医師が漢方薬を勧めてくれた。
処方されたのは、めまいや立ちくらみに用いる「苓桂朮甘湯(りょうけい
じゅつかんとう)」。
服用すると体が軽くなり、驚くほどすっきり目覚められるようになったと
いう。

これを機に、恵紙教授は漢方医学を学び、診療に生かすようになった。

担当するフクロウ外来では、自分と同じように朝起きられず、生活に支障が
出ている人の診療を続けている。

<朝の活動は苦手で午後から調子が上がる「フクロウ型」>
フクロウ外来というユニークな名称は、漢方医学の考え方に由来する。

漢方の名医として知られる故山本巌氏は著書「東医雑録」で、人間を二つの
タイプに大別した。
一日中、元気に活動できる「ヒバリ型」と、朝の活動は苦手で午後から調子が
上がる「フクロウ型」だ。

ヒバリ型の人は、早起きで夜の寝付きもいい。
骨格や呼吸器、循環器、胃腸が丈夫で、めったに病気にかからず、食欲も
旺盛。
体の無理が利くため、暴飲暴食を重ねがちで、中高年になって高血圧や糖尿病
などの生活習慣病に悩む傾向があるという。

一方、フクロウ型の人は朝起きるのが苦手。
午前中は体の動きも頭の動きも悪く、午後3時ごろから調子が上がるが、
夜はなかなか寝付けない。
体力がなくて疲れやすく、慢性的なめまいや頭痛、肩こりなどに悩みやすい。
ただし、40歳をすぎると体調不良の訴えが減り、60歳以降は元気で長生き
するという。

<原因不明のまま不調に悩み続ける人も>
恵紙教授によると、フクロウ型体質は医学的な疾患概念としては認められて
いない。
西洋医学の検査では「異常なし」と診断され、原因不明のまま不調に悩み
続ける人も多い。
首や脊椎のゆがみが見られることが多いのも特徴だ。

フクロウ外来は、恵紙教授と小児科の田中聡子医師の2人が担当。
まずは西洋医学の観点から疾患の有無を調べる。
異常がない場合も患者の話を聞いて、生活習慣や脊椎のゆがみなどを総合的に
判断し、フクロウ型体質かどうかを判断する。

フクロウ型であれば、「苓桂朮甘湯」や、全身倦怠(感や食欲不振に用いる
「補中益気湯」などを処方し、生活習慣の改善やストレッチ方法も合わせて
指導する。
西洋医学と漢方医学の長所を組み合わせ、症状の緩和を図るのが強みだ。

昨年8月の開設以降、九州を中心に約100人が受診。
特に、受験を控えた中高生や大学生の相談が多かったという。
症状改善には個人差があり、早い人は数日で効果が出るが、2~8週間ほど
かかる人もいる。

恵紙教授は「病院で異常は見つからず、『なぜこんなにきついんだろう』と
悩んでいる人が多い。周囲に怠け者と思われ、自己肯定感を失っている
ケースもある。実は体質に原因があるかもしれないので、一度相談して
ほしい」と呼び掛けている。

フクロウ外来の診察は毎週水曜午後1~4時で、1日1人の予約制。
新規外来の予約は今夏まで埋まっている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190508-00010004-nishinpc-sctch

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