病気の原因となる「バイオフィルム」とは

[病気の原因となる「バイオフィルム」とは]

(家庭の医学  2019年5月9日)

<細菌や微生物が形成する多糖体の薄い膜>
水回りのヌメリに困った経験はありませんか?
また、朝起きたとき、口の中にヌルヌルした感じがしたことはないで
しょうか?
これらの正体は細菌のかたまり。
集合体になると薄い糖の膜であるバイオフィルムを形成し、さまざまな病気の
原因になります。

バイオフィルムは、生活環境や体内で細菌の集合体が周囲に粘り気のある物体
(多糖体)を産生することでできます。
多糖体は表面にヴェールのような膜をつくりコロニーを形成していきますが、
これがバイオフィルムの正体です。

家庭内でみられるものとしては、お風呂場や洗面所の排水口、温浴設備などに
存在するレジオネラ菌やMAC菌などがバイオフィルムを形成します。
入浴時にシャワーの細かい霧やしぶきと一緒に吸い込んでしまうと、肺炎や
非結核性抗酸菌症などの病気につながるおそれがあります。

対策の基本は洗浄と殺菌です。
水回り、風呂場等ではぬめりが残らないよう、すみずみまで清掃することを
心がけましょう。
健康な若い世代では簡単に細菌が体内に侵入することはありませんが、
免疫力が低下した高齢者や持病のある人がいる家庭では、水回りの清潔に
注意してください。

体内に形成されるバイオフィルムで、口の中にできるいわゆる歯垢
(プラーク)もバイオフィルムの一種。
口腔内に潜む虫歯菌や歯周病菌などが共同体をつくり、歯の隙間や、歯周
ポケットの中などにバイオフィルムを形成します。

虫歯の主な原因菌となるミュータンス菌が歯の表面にバイオフィルムを
つくると、歯の表面からう蝕が進んでいきます。

また、ジンジバリス菌は歯と歯茎の間に歯周ポケットをつくりますが、
この歯周ポケットにもバイオフィルムが存在し、歯周病を引き起こす原因と
なります。

さらに、歯周病菌は口の中のトラブルにとどまらず、誤嚥性肺炎や
脳血管障害、心疾患、糖尿病など全身のさまざまな病気につながるほか、
低出生体重児のリスクにつながるなど、影響があることもわかっています。

バイオフィルムに起因する感染症は、医療現場でも大きな課題となって
います。
検査や治療に用いるカテーテル等にバイオフィルムが形成されることがあり、
治療の妨げになっています。

バイオフィルム内の細菌に対しては抗菌薬が効かないため、バイオフィルム
感染症の予防、治療法の開発に向けた研究が進められています。

(監修:松下歯科医院院長 松下和夫)

https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125977/

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