ベジタリアンのほうが脳卒中のリスクが高い

[ベジタリアンのほうが脳卒中のリスクが高い!?]

(家庭の医学  2020年4月9日)

<菜食中心では脳卒中のリスクが!?>
英国で行われた18年以上にわたる追跡調査によると、「ベジタリアンのほうが
肉食者より脳卒中、とくに脳出血を発症しやすい」という結果が出ました。

意外だと感じる人も多いはず。
この結果からどのようなことが考えられるのでしょうか。

野菜類や果物類には、抗酸化力をもつビタミン類や体液の電解質バランスに
必要なミネラル類が豊富に含まれており、これらの成分が血清脂質異常症や
高血圧症の予防・改善に役立つことが知られています。
また、特有の生理活性物質には抗がん作用などの健康効果があることも
明らかになっています。
これによって、脱メタボ&生活習慣病対策として「肉や油料理は控えて、
野菜を積極的に食べるべき!」というのが常識になったといえるでしょう。

それならば、肉や魚を食べないベジタリアンは、肉を食べる人より高血圧症や
脂質異常症になりにくく、脳卒中や心筋梗塞などの心血管系疾患になる人も
少ないだろうと思われがちです。

しかし今回の研究結果では、脳卒中、とくに脳出血に関しては、
ベジタリアンのほうが肉を食べる人より発症率が高くなったというのです。

この報告は、英国オックスフォード大学の研究者によるもので、2019年
9月に医学誌『BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)』電子版に
発表されました。

研究対象は、1993~2001年に心疾患や脳卒中にかかったことのない英国内の
男女4万8188人(平均年齢45歳)。
彼らをベースラインとして、食事内容がヴィーガン(絶対菜食主義者)およびベジタリアン(1万6254人)、肉は食べないが魚は食べる人(7506人)、」肉を食べる人(2万4428人)の3グループに分けて登録。

18.1年以上にわたり追跡調査し、虚血性心疾患と脳卒中の発症率を分析
しました。
分析対象となったのは、登録時と、2010~2013年に再度実施した
アンケートの両方に回答した2万8364人です。

追跡期間内に、虚血性心疾患を発症したのは2820人、脳卒中は1072人
(脳梗塞519人、脳出血300人)でした。

アンケート調査で、既往歴やライフスタイル、身体活動量などを調整して
分析したところ、虚血性心疾患のリスクは、肉を食べる人に比べて、
ベジタリアンでは22%、魚を食べる人では13%それぞれ低いという
推定結果になりました。

一方、全脳卒中のリスクはというと、肉を食べる人に比べて、ベジタリアンの
ほうが20%高くなりました。
とくに脳出血のリスクは43%も高くなったということです。

なお、肉を食べる人と魚を食べる人では統計上有意な差はありませんでした。

つまり、心臓病は少ないのに脳の病気(全脳卒中のうちとくに脳出血)の
発症率は、肉を食べる人よりベジタリアンのほうが高いという結果だった
のです。

動物性たんぱく質や脂質の摂取不足によって血中コレステロール値が低く
なりすぎると、血管壁の細胞が弱くなり、脳出血のリスクが高まることは
以前から指摘されていました。

また、動物性食品に含まれるビタミンB12の欠乏と脳卒中リスクとの関連
なども示唆されています。

動脈硬化の分布は西洋人と日本人で異なるという報告がありますので、
これらのことが日本人にピッタリ当てはまるかどうかは今後の研究に
よるでしょう。

今回の調査でははっきりとした因果関係までは証明されていませんが、
肉や魚を避ける食事をとりつづけることは脳へのリスクを高める可能性が
あります。
現時点でいえることは、野菜類は十分にとり、かつ肉や魚も適量の範囲で、
バランスよく食べたほうが健康によいだろうということです。

ベジタリアン傾向の人は、動物性食品を食べないことで不足しがちな
栄養成分を補う必要があるでしょう。

(監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純)

https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/126745/

No tags for this post.
カテゴリー: え栄養医学, の脳卒中 パーマリンク