新型コロナウイルス:検査の 感度と特異度

[新型コロナウイルス:検査の 感度と特異度]

感度が高いとは検査法の見落とし(偽陰性)が少ないことを意味します。
特異度が高いとは偽陽性が少ないことを意味します。

検査の種類によっては、感度・特異度ともに85%以上の
すぐれ物検査もありますが、そう多くはありません。

新型コロナウイルス(COVID-19)のPCR検査の感度・特異度は
30%から70%だそうです。
   (下記コラム参照)
もし、感度が50%の場合、偽陰性が50%ということになります。
2回続けて陰性ならば退院してよいことになっていますが、
25%の偽陰性(見逃し)が存在します。
1回退院して再度発症してしまったバスガイドさんのケースは
珍しくないことになります。
4回続けて陰性で6%の偽陰性(見逃し)、6回続けて陰性で1.5%の
偽陰性(見逃し)、7回続けて陰性で0.8%の偽陰性(見逃し)に
なります。

感度が60%の場合、偽陰性が40%ということになります
2回続けて陰性で16%の偽陰性(見逃し)、4回続けて陰性で
2.5%の偽陰性(見逃し)、5回続けて陰性で1%の偽陰性(見逃し)に
なります。

逆に、特異度が50%の場合、高熱があるが実際には季節性の従来型
インフルエンザだった人が、PCR検査を受けると50%の確率で
新型コロナウイルス感染者(偽陽性)と判定されて、
14日以上の隔離入院となってしまいます。
肺炎症状がない人は自宅で安静というのは、このような理由が
考えられます。

前提として、ウイルス量がある程度増えていないとPCR検査が
行えない、実施しても無駄手間になってしまうこともあります。

(横山歯科医院)


[新型コロナ、なぜ希望者全員に検査をしないの?
                   感染管理の専門家に聞きました]

(BuzzFeed Japan  2020年2月26日)(岩永直子)

新型コロナウイルス(COVID-19) 、不安でたまらないのに医療機関に
行っても検査をしてくれないという不満の声があちこちから聞こえてきます。
なぜ医師は検査をしてくれないのか、そもそもその検査に意味はあるのか、
感染対策のプロである聖路加国際病院、QIセンター感染管理室マネジャーの
坂本史衣さんに一から教えていただきました。
  ※インタビューは25日から26日午前にかけてメールとスカイプを
   使って行い、その時点の情報に基づいています。

<そもそもどんな検査なの?>

ーー新型コロナウイルスが流行し始めてから、「PCR検査」という言葉を
  よく耳にするようになりました。
  どんな検査か教えていただけますか?

患者さんから採取した検体(鼻やのどを綿棒で拭った液)のなかに新型
コロナウイルスの遺伝子があることを、遺伝子を増幅させることで確認する
検査です。

ーーどこで検査しているのですか?

厚生労働省によれば「これまで、国立感染症研究所や検疫所だけでなく、
地方衛生研究所、民間検査会社や大学などの協力を得ながら、
令和2年2月18日時点で1日3,000件を上回る検査体制を維持・獲得して
きました」となっています。

大学病院など設備が整っているところは病院で検査が可能ですが、
全ての病院で検査ができるようになっているわけではありません。
民間の検査会社も厚労省からの依頼で検査を受けつけているので、
病院から直接依頼はできません。

ーー結果が出るまでどれぐらい時間がかかると言われているのでしょうか?

現在病院でPCR検査を行うことはできないので、医師が検査が必要と判断
したら、保健所に書面と電話で依頼し、必要と認められれば保健所が病院に
検体を取りに来て、検査センターまで運び、そこから検査が始まることに
なります。

現在活用されている「リアルタイム RT-PCR」という方法では、検査自体は
5~6時間かかります。
検査自体の所要時間は約5時間ですが、検体の受け取りから結果の報告までに
それ以上の時間がかかるため、当日中に結果が出ることは稀です。

結果の判明について厚労省は「結果が判明するまでの期間は状況により
ますが、1日から数日かかります。」と言っています。
その通りであると思います。

また、一度に多数の検体が検査センターに搬入されると待ち時間がさらに
長くなり、結果報告までに2日ほどかかることもあります。
そのため、検査をすることになった患者さんの多くは、軽症でも入院を
必要とすることになります。

ーー検査は高額と言われていますが、どれぐらいかかるものなのでしょうか?

行政検査として行う場合に患者さんや病院への費用負担は生じません。
実際に人件費や材料費を合わせてどの程度の費用がかかっているのかは
明らかにされていません。

<検査の精度はどれぐらいなの?>

ーー検査の精度はどれぐらいだと考えたらいいのでしょうか?

検査の有用性を評価する指標に、「感度」「特異度」「的中率」があります。

感度とは、その検査が、陽性の人を正しく陽性と判定できる確率です。
新型コロナウイルスによる感染症 (COVID-19)を引き起こすウイルスである
「SARS-CoV-2」のPCR検査の感度は、30~50%や70%だという報告が
ありますが、いずれにしても100%ではありません。

感度は様々な条件にも左右されます。
例えば、新型コロナウイルス は、感染者のウイルス量がインフルエンザの
100分の1~1000分の1と言われており、そもそも検出されにくいと
考えられています。

また、のどから採取した検体より、鼻から採取した検体の方がウイルス量が
多く、検出率が高くなることが考えられているのですが、この方法が
必ずしも用いられるとは限りません。
というのは、鼻の穴に綿棒をいれると、くしゃみなどで飛沫にさらされる
リスクが高いのでためらう医療者もいるのです。
国内ではのどをぬぐった液が使われることが多いと言われており、
鼻に比べて感度が下がることが考えられます。

特異度とは陰性の人を正しく陰性と判定する確率で、検査は感度、特異度は
トレードオフの関係にあります。

「陽性的中率」というのは検査が仮に陽性だった場合に、どのくらい
その結果が正しいか(=本当にCOVID-19にかかっているのか)を示す
確率です。

風邪のような症状を訴えても、COVID-19にかかっている可能性が
現在のようにとても低い(=集団の中での有病率が低い)状況で
感度の低い検査をすると、COVID-19にかかっていないのに検査結果が
陽性と出る人の絶対数も多くなることになります。

すると、陽性という結果が出た人の中で、本当に感染している人の割合である
陽性的中率もかなり下がります。
よって、本当はCOVID-19ではないのに陽性の検査結果が出てくる可能性も
高くなります。

ーーまとめると、せっかく検査をしても、あまり精度は高くないから、
  その結果を100%信じるわけにはいかない検査ということになりますね。

すべての感染例を拾うことには限界がある検査です。
また、陽性の結果が得られても、そもそも日本国内の有病率(事前確率)が
低いので、陽性的中率は低いと考えられます。

<検査で陽性ならどうなるの?>

ーー現状では、この検査は何のために行われるものだと捉えたらいいですか?

COVID-19であることが臨床的に強く疑われる患者の確定診断のために
実施します。

ーー検査の結果が陽性の場合、次にどんな対応が取られますか?

「指定感染症」となっていますので、感染症法に基づいて入院せねば
ならなくなります。
その代り医療費は公費負担となります。

ーー無症状の場合でも入院することになるのですか?

現行の制度では無症状の場合でも、軽症でも検査で陽性になれば感染症法に
基づいて入院措置になります。

ただし、2月25日に政府が発表した「新型コロナウイルス感染症対策の
基本方針」によれば、今後は風邪症状が軽度である場合は、自宅での
安静・療養が原則となるようです。

ーー無症状の人は入院していつまで何をするのですか?

厚労省の通知によれば、陽性が確認されてから48時間後にPCR検査を
12時間間隔で行い、どちらも陰性なら退院できます。
陽性となったら再度48時間まってやり直しになるので、かなり元気な状態でも
病院に閉じ込められることになります。

<検査の意味は変化しているの?>

ーー治療法がない中で、それでも検査をする目的を教えてください。

これまでは海外の流行地域への渡航歴や滞在歴のある人や、感染者との
接触者を中心に検査を実施して来ましたが、その目的は封じ込めでした。
国内でヒトからヒトに広がらないようにするために、陽性者を洗い出して
入院させて、初期の段階で芽を摘んでしまおうという考え方だったのです。

しかし、現在はあきらかな渡航歴や滞在歴、患者との接触歴のない感染者が
発生しており、検査の目的が「封じ込め」から重症化しそうな患者
(あるいはすでに重症な患者)を早く見つけて死なせないことに変わって
きています。

COVID-19の患者だということが分かった段階で、試すことが可能な治療法に
ついて検討し、経過を予測しながら、重症度に応じて輸液や酸素療法、
血圧を上げる薬などをつかって生命を維持できるようにサポートします。

軽症な方は殆ど何もしないで治っていきます。

ーー現状で、無症状の人、軽症の人に検査をやる意味は薄いとされて
  いますね。
  検査の目的が変化しているからですね。

封じ込めを試みていた段階が終わりに近づいていますし、陽性と分かっても
治療法(=できること)がないからです。
今は資材や医療スタッフ、時間などの限りある医療資源を重症者のために
優先的に使う必要があります。

今後は病院でも検査ができるように準備が整えられていますが、すべての
病院で実施できるようになるわけではありません。

このような中で無症状あるいは軽症な方にまで検査を拡大すると、
重症な患者さんの検査が後回しになる恐れが生じます。

また検査のための手続きに時間を取られ、重症な患者さんの治療に割く
時間が減ってしまうことに繋がります。

ーー医療スタッフの疲弊にもつながりますね。

ウイルス感染症の検査と聞くと、インフルエンザの迅速検査のように
鼻に綿棒を入れて、30分程度で結果が出てくるような簡便なものを
想像する方が多いかもしれません。

しかし、SARS-CoV-2のPCR検査を行うには、書類の準備や保健所との調整、
結果が出るまでの長い待機時間の間に行われる比較的厳重な感染対策のために
かなりの労力を要します。
対応する保健所や検査センターの職員も同じだと思います。

<広まる陰謀論
   「日本で検査が少ないのは政府が感染者数を少なく見せたいからだ」>

ーー「韓国に比べて検査数が少ないのは日本政府が感染者を少なく
   見せたいからだ」というような陰謀論が広まっています。
   これについてはどうお考えですか?

現場で感じているのは、検査のキャパシティーを増やしているという割には、
重症で本当に検査が必要な人がすぐに検査できない状況があるのは確かだと
思います。
それは検査センターも手一杯で、検体を出したいと言ってもなかなか
受け入れられない実情があるからだと思います。

ですが、やはり必要な患者さんには速やかに検査ができる体制を一刻も早く
整えることは大事だと思います。

ただ、それは軽症の人も含めて全部検査しろということではありません。国ごとに段階や医療体制が異なるので何が適正な検査数なのかを考えるのは難しいです。

韓国は新興宗教団体を中心に短期間で爆発的に広がったという特殊な状況が
あり、今は接触歴を追いながら封じ込めるために検査数が増えていると
考えられます。

韓国のCDC(疾病管理予防センター)のウェブサイトでは、誰から感染
したかという接触歴が書かれていますから、感染者が多数出ていたとしても、
接触歴はまだある程度追える段階なのだろうと想像しています。

一方、日本では、誰から感染したかがわかりづらくなっている段階です。
無症状の人や軽症の人まで韓国並みに検査するのは、意義が少なくなって
いるのです。
検査が必要な人が誰なのか、状況が違うということです。

適正な医療とは何なのかということを考えて、今の段階で無症状の人を
捕まえて、感度がそれほど高くない検査を行えば、あてにならない結果が
どんどん出てきます。

感染した人を全員知りたいのですか? と考えた時に、そのデータを知って
有益なのかという問いに答える必要もあります。
無限に資源があるならやってもいいと思います。も
はやそれは研究となりますが。

SNSでは「サンプリングをしても現状を把握した方がいい」という意見が
流れてくるのですが、今は医療機関にも検査機関にもそんな余裕は
ありません。
限られた資源をどうしたら有効活用できるか考えた時に、8割は軽症で済む
病気だということをまず押さえないといけません。

この病気で今一番力を入れるべきは、高齢者や持病を持っている人が重症化
して亡くなってしまう可能性を限りなくゼロに近づけることです。
限られた医療資源をそこに振り向けなくてはなりません。

安易に検査を広げることは、そこに注げる資源を減らし、かえって国民に
とってマイナスになるかもしれません。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200226-00010000-bfj-soci&p=1

No tags for this post.
カテゴリー: か感染症(細菌・ウイルス・真菌・寄生虫) パーマリンク