生まれた月別「なりやすい病気」を米コロンビア大学が研究

[170万人調査で判明! 誕生月で「なりやすい病気」が分かる
            2月生まれは肺がん、9月生まれは喘息に要注意]

(現代ビジネス  2015年9月12日)


生まれ月によって、なりやすい病気や、なりにくい病気がある。
それだけ聞くと眉唾物だが、統計的に判明した科学的な事実だ。
それでは、春夏秋冬、どの月に生まれた人が好ましい結果になったのか。



<「早生まれ」と「肺がん」>
1月生まれの人は高血圧になりやすく、2月生まれは肺がんになりやすい–。
そう聞くと、「何かの占いかな?」と思われるかもしれない。
しかし、これはれっきとした科学的調査の結果なのだ。

「誕生月が生涯の病気のリスクに影響を与える」と題された、米コロンビア
大学の研究チームによる論文が、今年6月、アメリカ医療情報学会の機関誌で
発表された。
論文では、その人の誕生月によって、どんな病気になりやすいのか、
なりにくいのかが、詳細に記されている。
論文の筆頭執筆者である、コロンビア大学医療センターのメアリー・
レジーナ・ボーランド博士は語る。
「この論文は、1985年から2013年の間に、ニューヨークのプレスビテリアン
病院と、コロンビア大学医療センターで診療した約170万人の患者のデータを
基にしたものです。1688種類の病気と、誕生月の相関関係を検証したところ
55種類の病気について相関があると確認されました。誕生月ごとに、明らかな
差が現れたのです」


たとえば、日本人の死因の第1位である「肺がん」(「気管支がん」も含む)に
ついて見てみよう。
最もリスクが高いのは、2月生まれ。それに1月、3月生まれと、早生まれが
続く。
逆になりにくいのは、11月生まれという結果が出ている。


「このデータは、日本人にとっても参考になるものです」とボーランド氏は
言う。
「データ分析から分かったのは、いくつかの病気は、季節と直接的な関係が
あるということです。たとえば、妊婦の健康状態は季節によって変わり、
それに胎児も影響されます。また、新生児の体内に入るアレルゲンの量も
季節に左右されるため、ある種の病気の発症率が変わってくるのです。
今回調べたのは、ニューヨーク市の医院にかかった患者のデータです。
国際的に用いられる気候区分である『ケッペン・ガイガー気候区分』では、
ニューヨーク市と、日本の北部は、気温や四季を見ても類似した気候です。
ですので、日本にもこの調査が当てはまる可能性は高いでしょう」


これまで、誕生月との関係が研究されてきた病気の1つが「喘息」だ。
論文ではその発症のリスクにも言及。
リスクがいちばん高いのは、9月生まれの人だと分かった。

「喘息の原因の1つがダニのアレルギーです。以前より、ダニの繁殖期が
発病に関わっていると考えられてきました。今回の調査では7月〜10月
生まれに喘息患者が多く、とくに9月生まれが目立ったのです」
(ボーランド氏)


9月生まれで他に多い病気は、「中耳炎」や「適応障害」がある。

意外なところでは、「嘔吐しやすい」体質のリスクも高いのが9月生まれ。
ちなみに日本の著名人で9月生まれというと、安倍晋三首相もその1人。
潰瘍性大腸炎の持病を持ち、嘔吐説がたびたび取り沙汰されていることは、
周知の通りだ。


今回の調査で「誕生月と関係がある病気」について、最も高リスクだという
結果が出た誕生月がある。
それは10月だ。
相関が分かった55の病気のうち、15もの病気で最高のリスクで、総合的に
見て「10月生まれがいちばん病気になりやすい」という結果となった。

ざっと挙げるだけでも、「風邪(急性上気道炎)」「急性咽頭炎」「急性
細気管支炎」「胃の機能障害」「視覚不良」「近視」「遠視」「性的感染症」
「出産時・産後の会陰裂傷」など、多岐にわたる病気のリスクが高い。



<1番、健康な人が多いのは?>
ただ、なりやすい病気ばかりでなく、「なりにくい病気」も多いのが10月
生まれ。
不整脈の原因となる「心房細動」や「冠状動脈硬化症」、心臓が充分な血液を
送り出せなくなって起こる「鬱血性心不全」など、とくに心疾患のリスクが
低かった。


11月も、10月と同じくらいリスクの高い誕生月で、「ADHD(注意欠陥
多動性障害)」や、「急性扁桃炎」「非感染性の腸炎」、さらに「下痢」に
なりやすい。
一方で、血管に閉塞ができたり、狭くなったりして血流が滞る「慢性心筋
虚血」や、心臓の血液の流れを調整する弁の障害「僧帽弁疾患」といった
心疾患のリスクは低い。

また、12月生まれについても心疾患のリスクは総じて低いという結果が出た。
心臓系の病気は直接命に関わるだけに、10〜12月生まれの人にとっては、
そのリスクが低いのはありがたいところ。


では逆に、心疾患のリスクが高い誕生月はというと、春先に集中していた。
最も悩ましいのが3月生まれ。
「心房細動」「冠状動脈硬化症」「鬱血性心不全」「僧帽弁疾患」。
これらの重病で最高のリスクなのが3月生まれなのである。

心疾患以外に、「前立腺がん」でも1位というから、3月生まれの男性は
要注意だ。


4月も「狭心症」や「急性の心臓病(心臓発作)」「慢性心筋虚血」など、
心臓のリスクが高い誕生月だ。


ボーランド氏が解説する。
「太陽の光を浴びないと、人間はビタミンD不足になります。胎内にいる時に
母体にビタミンDが欠けていると、血中の鉄分濃度が低くなり、胎児に栄養が
行きわたりません。3〜4月生まれの人は、日照時間が短い季節に母親の
お腹の中にいたことで、心臓や心血管系の病気にかかりやすい体になったと
考えられます」


それでは総合的に見て、いちばん病気になるリスクの低い誕生月はいつなの
か。
それは5月。
「なりやすい病気」は1つもなく、「風邪(急性上気道炎)」や「結膜炎」に
かかりにくい。
「最も健康な人が多い誕生月」と言えるのだ。

7月生まれの人も特に注意すべき病気はなく、5月に次いで総合的なリスクも
低かった。
「下痢」や、「非炎症性の膣疾患」など生殖系疾患にも女性はかかりづらい。

6月、8月生まれもリスクは低めで、意外なデータとしては、6月生まれは
最も性病検査にひっかかる人が少ないことが分かった。

総じて見ると、秋から冬にかけての誕生月の人は「なりやすい病気」の数が
多く、春は心臓系の重病になりやすい。
そして、初夏から夏真っ盛りの時期に生まれた人のほうが、病気になる
リスクは低めという結果になった。


東京大学医科学研究所の上昌広特任教授は、この論文をこう評価する。
「人間の体質や成長に、生まれた季節が関係するということは大いに考え
られることです。統計的に病気の発症率を調べる方法論はとても有効だと
思います。統計的なデータをとることで、病気の原因を突き止めることにも
繋がり、対策もとることができる。非常に価値のある調査ですし、日本でも
同じような研究をする人が出てくるでしょうね」

誕生月と病気との関係が分かったとは言え、生まれた月はいまさら変えられ
ない。
今回のデータはあくまで参考に、常日頃の体調管理をしっかりすることで、
健康で長生きを目指したい。



「週刊現代」2015年9月12日号より




http://news.livedoor.com/article/detail/10581212/





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