脳卒中リハビリ 高い効果 注目の川平法、各地で実践

[脳卒中リハビリ 高い効果 注目の川平法、各地で実践]

(東京新聞  2013年5月21日)


脳卒中のリハビリテーションで高い効果が認められ、注目されている
「促通反復療法(川平法)」。
考案した鹿児島大前教授の川平和美さんが指導する同大霧島リハビリ
テーションセンター(鹿児島県霧島市)で研修を受けた理学療法士らに
よって、各地で実践されている。
現場を取材した。
(伊東治子)


「では、小指をやりましょう。1、2、3…」
作業療法士の掛け声に合わせ、吉田広さん(69)が右手の小指を伸ばす。

吉田さんは9年前に脳卒中で倒れ、右手がまひしていた。
約1年前、群馬県玉村町の角田病院で川平法のリハビリを受けると1時間後、
全く動かなかった小指が動くように。
「以前、通った病院で『手のまひはあきらめなさい』と言われたので驚いた」
と吉田さん。


宇都宮市から角田病院に通う30代の男性は3年前、脳動静脈奇形の手術を
受けた後、左半身がまひし、歩く時に左足を大きく振り回さないと前に
進めず、足首の関節も動かなくなった。

だが、今年1月から同病院で週1回、さらに自宅で毎晩、同病院の指導を
受けた妻の介助で川平法を続けたら、歩行も関節の動きもなめらかになった。

「以前に別の病院で、まひを悪化させないためのリハビリをしたが、川平法
なら改善することが分かった。今の目標はスキーやテニスができるように
なること」と話す。


川平法は「脳には損傷した神経細胞の役割を、生き残った神経細胞が肩代わり
する『可塑性』がある」という考え方に基づいて考案。

2006年からは、外部の医療従事者にも指導してきた。

特徴は、患者が意図した動作を実現するため、作業療法士や理学療法士が、
あらかじめ患者が動かそうとする場所を刺激し、神経回路の興奮を高める
ことだ。


例えば、吉田さんがまひした小指を伸ばそうとする。
その直前に、作業療法士は吉田さんの小指を素早く折り曲げるとともに、指の
付け根を軽くたたく。
これによって、吉田さんの脳から送られた「伸ばせ」という命令が、小指を
動かす神経回路に伝わりやすくなり、実際に小指も伸びる。
同じ動作を1セット100回を基本に繰り返すことで、小指を動かす神経回路が
強化される。

「理学療法士らの操作によって、患者は楽に意図した動作を実現でき、
効率的にまひを改善させることができる」と川平さん。

川平法の効果は、出雲市民リハビリテーション病院(島根県出雲市)の
木佐俊郎・障がい児者リハセンター長らが、2011年に発表した論文でも
明らかになった。
脳卒中の患者52人を対象に、通常のリハビリと、それに川平法を取り入れた
場合を比較したところ、川平法に効果があるとの結果が出た=グラフ。

従来は脳卒中の発症から半年たつと、まひの改善は難しいとされたが、川平法
では角田病院の患者のように、数年たった患者でも改善例がある。

ただし、まひ回復には個人差がある。

川平さんは「発症後、リハビリを始めるのが早いほど効果が出やすい」と
話す。


霧島リハビリテーションセンターでは、これまで各地の病院から派遣された
約600人の理学療法士と作業療法士が、1週間〜数カ月の研修を受けた。
これで川平法を実践する病院は増えたが、患者が殺到し、需要に対応しきれて
いないのが現状だ。

川平さんは「医療保険が認められるリハビリ時間は限られており、効果が
少ないリハビリに患者の時間を費やすことは許されない。今後も研修などを
通して、リハビリの質を向上させたい」と話している。




http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2013052102000147.html





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