女性と病気 線維筋痛症:3 リハビリで減った絶望感

[女性と病気 線維筋痛症:3 リハビリで減った絶望感]

(朝日新聞  2011年9月3日)


線維筋痛症と診断された吉田裕子さん(40)は2003年4月、心療内科
クリニックで自分に合う薬を探すことになった。
2週間おきに通い、鎮痛薬や抗うつ薬、睡眠導入薬など、さまざまな薬の
組み合わせを試した。
動悸、息切れがしたり、月経が止まったりした薬もある。
量を増やしたら、気が遠くなり、「このままだと失神してしまう」と医師に
SOSを出したこともあった。
ほぼ1カ月おきに新しい薬の組み合わせを試したが、痛みにはまるで効果が
なかった。

2003年冬、体調はどん底に落ち、トイレに行くとき以外は、ほぼ一日中寝て
いるようになった。
「このまま寝たきりなのかなあ」
天井を眺めていると「このまま生きていても、将来はない」という絶望感に
負けそうになった。
そんなときは、子どもたちを残して死んでたまるかと、悪い考えを振り
払った。


このころ、新聞記事をきっかけに入会した「線維筋痛症友の会」の会報に
全国の医療者リストが載った。
その中に、熊本大学病院膠原病内科の講師だった坂田研明さん(54)の名前が
あった。
心療内科の医師に紹介状を書いてもらい、2003年12月、熊本大病院に
向かった。

坂田さんは米国留学中に線維筋痛症についてある程度聞いていたが、実際に
患者を診たのは初めてだった。
経緯をじっくり聞いてから、口を開いた。
「ここまで悪化したら、治らない。痛みはとれないが、このまま
(の寝たきり)が嫌だったら、動こう」

1年半近くほぼ寝たきりの生活が続き、吉田さんの右脚は「くの字」に
固まっていた。
坂田さんは「一日の中で『今なら痛みが弱い』という時間もあるはず。一緒に
頑張ろう」と言い、リハビリで脚を治し、生活の幅を広げることを勧めた。

さらに「痛みのほかに日常で1番困っていること」としてまず、重い便秘を
漢方薬で改善していくことにした。

ゆっくりだが右脚の動きも良くなり、1年後には階段を3段、のぼることが
できた。
やがてリハビリ用の自転車をこげるまでになった。
「自分は何もできない」という絶望感が、少しずつ消えていった。




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