ビートルズがCTをつくった? (こんなにも面白い医学の世界)

[こんなにも面白い医学の世界 ビートルズがCTをつくった?]

(レジデントノート  2019年4月号)

研修医の先生が働くような大きな病院では、CTは当たり前のようにあり、
いつでも撮影できるところも多いと思います。

実はこれは国際的には異常なことで、先進国のなかでも日本のCTの数は
世界一です。
経済協力開発機構の2014年のデータでは,人口100万人当たりの日本の
CT台数は107台、2位はオーストラリアで56台、3位の米国が41台という
結果でした。
日本にあるCTの総台数は大体コンビニの数の5分の1くらいにあたります。

ちなみに、人口100万人当たりのMRI台数も日本が1位で52台、2位は
アメリカで38台とのことです。

このように、日本はCT王国ですが、私が研修医の頃はCTはまだそれほど
一般的ではなく、ヘリカルでもなかったため、撮影にかなり時間がかかって
いました。

私の先輩方は、まだCTがない時代、脳腫瘍や卒中の診断はすべて血管造影で
行っていたそうです。

このCTですが、私が生まれた1967年にゴッドフリー・ハウンズフィールド
博士によって発明され、後に医学への多大な貢献に対して1979年のノーベル
生理学・医学賞を受賞しています。

ハウンズフィールド博士は、今はなき英国のレコード会社、EMI
(Electric and Musical Industries Ltd)の中央研究所の所属であったため、
同じくEMIに所属していたビートルズのレコードの売り上げによる巨額の
利益がCTを生んだ、と言われてきました。

ですが、実際には、EMIがCTの開発に費やしたお金を調べてみますと
約10万ポンド(今の日本円で約2,000万円)であり、イギリス政府の
保健社会保障省は60万ポンド以上費やしていたことがわかりました。
したがって、ビートルズよりも、むしろ納税者に感謝すべきであると言われて
います。

ですが、世界の音楽界に多大な影響を及ぼしたビートルズ、この神話は
音楽ファンにとっても心温まるものであり、個人的にはそっとしておきたい
Let it beの気持ちです。

ちなみに、アメリカでは高度肥満の患者さんに胃のバイパス術をして
いましたが、患者さんによってはCTの機械に入りきらないことが
ありました。
そういうときにどうするかというと、動物園へ行って象やカバを撮影
するための動物用のCTで撮影するのです。
すごい国ですよね。

(著者:中尾篤典先生/岡山大学医学部 救急医学)

https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758116237.html

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