喫煙で難聴を招くリスクが上昇

[喫煙で難聴を招くリスクが上昇]

(家庭の医学  2018年10月9日)


<禁煙で非喫煙者と同程度に低減>
百害あって一利なしとされる喫煙。
がんをはじめ、心臓や肺の病気だけでなく、聴力にもダメージを与えるという
研究結果が、2018年3月に発表されました。
喫煙により聴力低下のリスクが上昇することを知っておきましょう。

国立国際医療研究センター(東京都)などの研究チームが、20~64歳の
勤労者約5万人を対象に、2008年から最長8年間行った追跡調査で、
喫煙者は聴力低下のリスクが高いことがあきらかになりました。

対象となった勤労者の多くは40代で、調査開始時点、喫煙者は約1万9000
人、喫煙歴のある非喫煙者が約9800人、喫煙歴のない非喫煙者が約2万1000
人でした。
調査開始時には、対象者全員の聴力に問題はなかったのですが、調査期間中に
約5100人が難聴と診断されました。

この研究では、純音聴力検査を用い、高周波帯難聴とは4000ヘルツ以上の
音の聴力低下、低周波帯難聴は1000ヘルツ以下の聴力低下を指します。

検査の結果、1日10本以内の喫煙者では、高周波帯難聴リスクが非喫煙者の
約1.4倍、低周波帯難聴リスクが1.1倍でした。
さらに、1日11~20本の喫煙者の場合、高周波帯のリスクは1.6倍、
低周波帯のリスクは1.2倍になり、1日20本以上では、それぞれ1.7倍、
1.4倍に高まったということです。

タバコに含まれるニコチンのもつ毒性が、聴覚器官にダメージを与えることが
原因と考えられています。

さらに、喫煙によって、血液中のヘモグロビンと一酸化炭素が結合し、
カルボキシヘモグロビンが増えることで血中酸素量の不足が生じたり、
血液粘度の上昇がみられます。
これらにより、音の受容器官のひとつである内耳の蝸牛(かぎゅう)が虚血を
引き起こすと考えられています。

この研究では、禁煙により、聴力低下が改善されるという結果も報告されて
います。
禁煙から5年以上経過すると、聴力低下のリスクは非喫煙者とほぼ同等までの
低減がみられています。

すべての喫煙者が難聴になるわけではありませんが、このまま喫煙を続けて
いれば、将来の発症リスクは確実に高まります。
喫煙が引き起こす多くの疾患リスクの1つに、難聴が加わったことをぜひ
覚えておいてください。

自分の力でやめることができなければ、禁煙外来を受診して、専門医の
サポートを受けながら、禁煙に取り組むことをおすすめします。


(監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125532/


————————————————–


[関連ページ]

妊娠中の喫煙で子供の難聴リスク高まる―米研究


————————————————–



No tags for this post.
カテゴリー: き禁煙, み耳,  難聴 パーマリンク