犬の「身ぶり」は19種、組合せで別の意味も

[犬の「身ぶり」は19種、組合せで別の意味も、研究]

(ナショナルジオグラフィック  2018年7月12日)


イヌが飼い主の注意を引きたがっているとき、たいていはきちんと伝わる
ものだ。
彼らは体をなでてほしいときにごろりと寝転がったり、食べ物が欲しいときに
前足で飼い主の脚をつついたりする。

学術誌「Animal Cognition」に発表された新たな論文によると、飼い主に
自分の要望を伝えるために、イヌは少なくとも19種類のジェスチャー
(身ぶり)を使いこなしていることが明らかになった。

たとえば前足でつつく、首をかしげるというジェスチャーの組み合わせは、
「外へ行きたい」と解釈できるし、食べ物を要求するための組み合わせも
存在する。

「イヌと、イヌがわたしたちに求めていることを、もっと深く理解した
かったのです」。
今回の研究のリーダーで、英マンチェスターにあるサルフォード大学の
大学院生、ハンナ・ワーズリー氏はそう語る。

イヌはすぐれたコミュニケーション能力を持っており、「類人猿と似たような
ことをしますが、彼らはそれを種の壁を越えてやっているのです」

指示的ジェスチャーとは、言葉を使わずにメッセージを伝える行動だ。
人間を含む類人猿の間では一般的に見られるもので、人間の赤ちゃんも
親の注意を引くときにこれを使う。

霊長類以外では例が少ないが、最近の研究ではワタリガラスもこうした行動を
取ることがわかっている。

指示的ジェスチャーの定義においては、メッセージの送り手が自分の体の
一部または物を使って要求を伝えることが必須とされる。
ジェスチャーは受け手に向けられており、反復によって学習される。

また、あくまでその行動自体は「物理的に効果を持たない」ものでなければ
ならない。
「指示的ジェスチャーは意図を持って行われるものです」とワーズリー氏は
言う。


今回の研究では、英国に暮らす37匹のイヌとその飼い主がやりとりしている
様子の動画が大量に撮影された。

研究チームは動画を見て、まず指示的ジェスチャーの可能性がある47種類を
挙げ、さらに解析を進めて、日常的なコミュニケーションに使われている
証拠のある19種類を特定した。

論文によると、その内容は次の通り。
 ・寝そべってお腹を見せる
 ・頭を何かの下に潜りこませる
 ・頭を前に出して自分の体の場所を示す
 ・後脚で立つ
 ・頭を横に振って興味がある物を示す
 ・寝そべって体を地面にすりつける
 ・寝そべって後脚の片方を上げる
 ・座って脚のひとつを上げる
 ・物や人の下に潜り込む
 ・おもちゃをくわえて人のほうに放り投げる
 ・1カ所で跳びはねる
 ・前脚を物にのばして引き寄せる
 ・鼻や顔を押し付ける
 ・舐める
 ・両前脚でお手
 ・片方の前脚でお手
 ・頭をすりすり
 ・人の腕を甘噛みする
 ・前脚の片方で何かをさわる

また、最も一般的な要求は「食べ物/飲み物をちょうだい」「ドアを開けて」
「おもちゃ/骨を取って」「体をなでて」だったという。

それぞれのジェスチャーで何を要求しているかはイヌにより異なっていた。

多くの場合、これらのジェスチャーを複数組み合わせて、イヌは人間に
「自分が要求しているものが伝わるように」しているという。



<ジェスチャーの数が変わる可能性も>
この研究は、霊長類以外の種が、まったく別の種に指示的ジェスチャーを
用いる証拠を示した。

人間の言語の進化において、指示的ジェスチャーは重要な節目となるものと
考えられている。

今回の結果は、研究者がイヌの行動を読み解く際の手がかりとなるだけで
なく、イヌと飼い主とのコミュニケーションの促進にも役立つ。
たとえば、鼻を物体に押し付けるといったある種の行動が、尾を振るという
また別の行動と組み合わさったとき、それが異なる意味を持つ場合があると
いうことを飼い主は理解できるようになるだろう。


ワーズリー氏の次の目標は、出会って間もない飼い主を相手にする場合、
イヌがどのように交流するかを研究することだ。
今回の研究対象は、少なくとも5カ月間、飼い主と一緒に過ごしたイヌ
だった。

犬と飼い主が過ごした期間が変われば、イヌのジェスチャーのタイプと数が
訂正されることもあるだろう

たとえば予備的な調査では、「大人数の人間と暮らしているイヌは、より
多くのジェスチャーを発達させる」らしいことがわかっているという。


(文=ELAINA ZACHOS/訳=北村京子)


http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/071100308/



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