低周波音で不眠に

[低周波音で不眠に…]

(家庭の医学  2016年6月15日)


<気になるのは私だけ?>
低周波音による不眠や食欲不振などの健康被害が増えています。

全国の自治体に寄せられる相談は、年に200件以上で、20年前の5倍とも。
これは、家庭用の発電装置や給湯器が急速に普及していることが原因として
考えられます。
なかには低周波音をめぐり、近隣トラブルに発展してしまうこともあるの
です。


音は周りの空気が振動することで耳に伝わってきます。
1秒間に振動する回数を周波数(ヘルツ)といい、振動回数が多いと高い音、
振動回数が少ないと低い音として聞こえます。
人が聞きとれる音域はおおよそ20~20,000ヘルツで、この音域より周波数が
低くても高くても聞き取りにくくなります。
高齢になると、健常人でも一般的に高周波数音域は聴力が悪くなるのですが、
低周波数音域はあまり変化がないことが多いのです。

低周波音とは1~100ヘルツの音のこと。
また、人の耳では聞こえないとされる20ヘルツ以下を超低周波音といいます。

低周波音はトラックやバス、電車や航空機のエンジンの低い音のなかに
あります。
そのほか、波が防波堤にぶつかり砕けるとき、大きな滝壺に水が落ちるときの
音に含まれています。


体の不調を引き起こすと考えられる低周波音は、エアコンの室外機、冷蔵庫の
コンプレッサー、家庭用発電装置・給湯器から発生する機械音です。
そのほか、工場の大型機械、スーパーやコンビニなどの冷凍庫・室外冷却器が
原因の場合もあります。
低周波音だけではなく、家具や建具、窓や床が受ける振動が要因になる
ケースもみられます。

主な症状は、イライラ、不眠、集中力の低下、不安感のほか、頭痛、めまい、
動悸、耳鳴り、肩こり、胸の圧迫感などがあげられます。

さまざまな生活音であふれている日中より、静かな夜間で発症します。

また、自宅で症状を訴えることが多く、外出すると症状が消えるのも特徴
です。

発症のきっかけは、新築や引っ越しなど住環境の変化です。

ここ数年、夜間の電力を利用した給湯器が一般家庭に普及、これが深夜から
早朝にかけて稼働するときに低周波音が発生します。
隣人の設置場所が寝室の近くだった場合、「眠れない」といった不調を訴える
ことが多いようです。
このため近隣トラブルに発展することも少なくありません。

音に対し次第に敏感となり、ついに我慢できなくなってしまいます。
しかし、不快感や圧迫感を覚えることには個人差があり、同じ状況でも何も
感じない人もいます。
医療機関を受診しても、更年期障害や自律神経失調症と診断されてしまう
ことも。
また、症状は人によって異なるため、心理的なストレスも影響しているのでは
と考えられています。


環境省は低周波音の調査を開始しましたが、現在のところ低周波音に対する
法的規制がありません。
そのため、国や行政による指導や移転を求めることはできません。

また、低周波音による健康問題の診断基準についても、まだ確立されて
いないのが実情です。


低周波音が気になる場合、まずは自治体に相談し調査測定を行いましょう。
音源を確定した上、双方で話し合う必要があります。

とはいえ、音源を確定できない、解決策がとれないということもあるで
しょう。
自分でできる対策として、寝室を変えてみる、窓の揺れを抑えたり絨毯を
敷いたりするなど、建物から受ける振動を軽減させる方法が考えられます。


体調を整えていくことも重要です。
耳鳴りなどがする場合は耳鼻咽喉科、気分がふさぎ強くストレスを感じる
ときは心療内科を受診することになります。
症状をよく聞いてもらい、軽減する手立てや生活上の工夫を相談して
ください。


ひとつずつできることから取り組んでいくとよいでしょう。




(監修:はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック院長 生井明浩)




http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/123693/





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