高校生が学会で研究発表、ワサビなどでアニサキスを予防

[高校生が学会で研究発表、ワサビなどで寄生虫を予防]

(あなたの健康百科  2014年04月11日)


<日本寄生虫学会>
日本の科学技術を支えるには、理系人材の育成が重要。
こうした中、第一線で活躍する研究者らを前に、高校生が自身の研究結果を
学会で発表した。
発表の場は、愛媛県で開かれた第83回日本寄生虫学会大会(3月27日~
28日)。
900人近い専門家が会員の、寄生虫に関する日本最大級の学会だ。

この大舞台に登壇した大阪府立北野高校3年の戸城達行君は、市販のサバを
ワサビやしょうゆなどで一夜漬けすることで寄生虫のアニサキスを完全に
抑えることができ、高い防虫効果が得られたと報告した。



<高校生の学会発表は聞いたことない>
北野高校は、文部科学省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」
研究開発校の指定(2006年度末で終了)や、大阪府教育委員会の「スーパー
サイエンスコース(SSコース)」の認定を受けるなど、理数系の教育に力を
入れている。

今回の研究は、同校3年の戸城君と同級生の中井恵さん、平野有希さんの
3人が、同校で生物の授業を担当する神戸大学大学院保健学研究科の小松
慎太郎氏(寄生虫学)の指導を受けて取り組んだ。

小松氏は、科学に強い興味を持つ子供たちにアカデミックな場で貴重な経験を
積ませたいと学会にアプローチし、研究発表の運びとなった。

学会事務局は、高校生による学会発表は「83回の全記録は不明だが、過去
30年でも聞いたことがない」としている。



<感染報告は年間2,000~3,000例>
研究の対象となったアニサキスは、サバのほかイカやサケ、サンマなどの
魚介類に寄生し、人間へは主にこれらを食べることによって感染する。
感染すると、アニサキスの幼虫が寄生のため胃や腸などを食い破ろうとする
ため、激しい腹痛などの症状が出る)。

アニサキスは加熱や冷凍で殺虫できるが、国立感染症研究センターによると、
魚介類を生で食べる文化を持つ日本では年間2,000~3,000例の感染報告が
あるという。

さらに、流通技術の発達で生で食べられる魚介類が増えていることに加え、
2020年に控える東京五輪を機に日本食ブームが過熱することで、アニサキス
症の発生頻度が世界で高まる恐れを懸念する声もある。

そこで戸城君らは、調味料で簡単にアニサキスを防ぐことができないかと
考え、検証した。



<ショウガや料理酒などでも高い効果>
戸城君らは、大阪府内のスーパーマーケットなどで売られていたマサバ45匹、
ゴマサバ10匹を購入。
アニサキスに感染していたのは、マサバで 93.3%、ゴマサバで70.0%
だった。

このうち、千葉県産のサバから検出されたアニサキスの幼虫で、ワサビと
食塩の防虫効果を検討した。

各10匹の幼虫を、ワサビ(1~5グラム)または食塩(0.1、0.2、0.5、0.7、
1.0グラム)を溶かした水に24時間漬け込み、活動の状態を観察した。
すると、食塩では完全に抑えられなかったが、ワサビではどの分量でも
100%の防虫効果が得られた。

このほか、ショウガや料理酒、ウイスキー、しょうゆ、炭酸水、食用油、
米酢、タバスコ、ベーキングパウダーでも検討。
その結果、ショウガ、料理酒、ウイスキー、しょうゆに24時間漬け込んだ
場合、ほぼ100%の防虫効果が得られた。
なお、検討は産地ごとに行われたが、効果の違いは認められなかったという。



<会場からの質問にもそつなく回答>
座長を務めた神戸大学大学院保健学研究科の宇賀昭二教授(寄生虫学)に
「これまでのディスカッションの様子を見てどきどきしていると思いますが、
会場にいるのは親切な人ばかりなので、頑張ってください」と促されて登壇
した戸城君は、ひるむことなく研究内容を発表。
最後には「アニサキスに感染した魚介類をワサビなどの調味料に一晩
漬ければ、有効な防虫効果を得られることが明らかとなった」とまとめた。

会場から「24時間という設定はサバを早く食べたいと思う人には長過ぎる
ので、より短い期間での効果を検討してはどうか」などと質問されると、
「今後はさらに短い期間での検討を重ねていきたい」と回答。

生徒たちを学会場まで引率した小松氏は「子供たちは素晴らしい研究発表の
場で、堂々と発表できていた。これからも高大連携の懸け橋となることを
目標に、医学を含む研究の発展を子供たちに託すことができればうれしい」と
目を細めた。




http://kenko100.jp/articles/140411002919/





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