鎌状赤血球症とマラリア感染症との関係

[鎌状赤血球症]

(Wikipedia)


鎌状赤血球症は遺伝性の貧血病で、赤血球の形状が鎌状になり酸素運搬機能が
低下して起こる貧血症。
鎌状赤血球貧血症ともいう。

主にアフリカ、地中海沿岸、中近東、インド北部で見られる。

常染色体不完全優性遺伝をする。

遺伝子型がホモ接合型の場合、常時発症しているのでたいていは成人前に死亡する。
遺伝子型がヘテロ接合型の場合、低酸素状態でのみ発症するので通常の日常
生活は営める。



<原因>
遺伝子突然変異により、11番染色体にあるヘモグロビンβ鎖の6番目の
アミノ酸に置換が生じることが原因である。
そこには本来はグルタミン酸が入るのだが、バリンがその代わりに入って
合成が行われる。



<分布と適応的意味>
鎌状赤血球遺伝子を持つ者は、日本にはほとんど見られないが、マラリアが
比較的多く発症するアフリカにはかなり見られる。

鎌状赤血球の遺伝子とマラリアの流行には深い関係がある。

マラリアは幼児期にかかると、死に至る可能性が高い感染症である。

鎌状赤血球症自体は保有者の生存に不利であるが、マラリア蔓延地域では
その遺伝子をヘテロに持つものは非保有者と比べて相対的に自然選択において
有利であり(生存確率が高い)、この遺伝子が維持されていると考えられて
いる。

しかし保有者ばかりになれば、保有者同士の子にはホモで持つ者が増える
ため、非保有者が頻度依存淘汰的に有利になり、非保有者の割合も一定に
保たれていると考えられる。


ヘテロの遺伝子保因者は正常状態では60%が正常赤血球、40%が鎌状赤血球の
状態である。

マラリア原虫は人体では赤血球内で増殖する。
マラリア原虫に感染すると赤血球のpHは約0.4低下する。
pHが低下するとボーア効果により赤血球の鎌状化が進み、全身の赤血球の
鎌状赤血球の割合が増加する。
マラリア感染初期ではマラリア原虫が感染し鎌状化した赤血球は脾臓で
優先的に除去される。
感染後期では鎌状化した赤血球によりマラリア原虫は機械的に壊される。
これらの機序によりヘテロ保因者はマラリアに対し耐性を発揮する。





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