[体の声を聴く:心療内科医は何を診るか]
(読売新聞 2013年9月12日)
私の心療内科外来を受診する患者さんの病気で多いのは、何だと思われるで
しょうか。
うつ病?
それとも統合失調症?
実は、
(1)慢性疼痛症(慢性の痛み)
(2)消化器疾患
(3)めまい、ふらつきなどの不定愁訴を伴う生活習慣病
(高血圧症や糖尿病など)
の順に多いのです。
慢性疼痛症には、腰痛症、片頭痛、緊張型頭痛、腹痛、線維筋痛症など、
さまざまな難治性の痛みが含まれます。
「え? 心療内科でこんな病気や症状の患者を診るの」と不思議に思われるで
しょうね。このシリーズでは、私たち心療内科医がどのような診かたや治療を
するのかをお話しします。
その際のポイントはというと――。
(1)体の病気には、X線検査や血液検査などで診断がつく「器質的」な
病気と、検査では分からない「機能的」な病気がある。
機能的病気の方が70%ほどを占める。
(2)体と心は深く関係し、どちらが先でもない(心身相関)。
また、心は家族、学校、職場などの社会・環境と深く関係する。
(3)不健康な生活習慣(喫煙、飲酒、食生活など)は人の心のあり様を
反映し、病気の発症に関わる。
(4)信頼できる治療関係が医療の土台で、患者理解が最も大切。
(5)体と心を含む全体を表す「身」という診かたがある。
(6)人には個別の考え方、行動の仕方があり、病気の原因や結果に
つながっている。
(7)多くの人は「体の声」「心の声」を無視して生きている。
次回からは患者さんに登場してもらい、心療内科の診療の実際をご紹介
しましょう。
(清仁会洛西ニュータウン病院名誉院長・心療内科部長 中井吉英)
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