パーキンソン病とマグネシウム

[パーキンソン病・パーキンソン痴呆症とマグネシウム]

(東京都神経研 神経病理学研究部門 小柳 清光 先生)

<ワイル賞を受賞して>
http://www.tmin.ac.jp/fukyu/news/2002/193/news193a.html
より抜粋引用


神経系はミネラル(微量金属)と深い関係を有しています。
たとえばカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)はシナプス伝達には
不可欠な物質であり、Mgは神経系にも存在する200種類をこえる酵素の
補酵素であるといわれています。

必須微量金属の摂取不足が何らかの神経変性疾患を惹起しないか?
このような観点から研究を続け2002年6月の米国神経病理学会で
パーキンソン病・パーキンソン痴呆症解明の糸口となる論文を発表、日本の
研究室から初めてのワイル賞(米国神経病理学会最優秀論文賞)を受賞
しました。
(神経研ニュース・平成14年7月31日発行・第192号)


論文のタイトルは「Degeneration of substantia nigra in magnesium
deficiency in rats for two generations (ラット2世代に渡るマグネシウム欠乏
実験で認められた黒質の神経細胞脱落)」。

黒質は脳の奥深くにある神経細胞のかたまりで、運動をスムーズにします。
ラットを用いた、2世代に渡るMg欠乏実験の結果、生後1歳(ラットでは
壮年期)で、中脳の黒質に神経細胞脱落を来すことを見出しました。

これは、原因不明であるヒトのパーキンソン病やパーキンソン痴呆症が、
妊娠中の母親のMg摂取不足に加えて、生後患者自身の長期のMg不足が続く
ことが原因となって発症する可能性があることを世界でも初めて実験的に
示した発表です。


パーキンソン病・パーキンソン痴呆症では黒質の神経細胞が脱落して、
ふるえ、硬直などをおこします。
パーキンソン病では黒質の神経細胞脱落とともにレビー小体がみられ、
パーキンソン痴呆症では神経原線維変化が合併して、いずれもヒトでは50歳
以降に多く発症します。

30年ほど前からパーキンソン痴呆症の発症にはミネラルが関係するのでは
ないかと言われていました。
それはつまり低Ca、低Mg、高アルミニウムの飲料水を摂取することが原因
ではないかと言われ、この仮説に基づいた動物実験が世界中で数多く実施
されましたが、はっきりとした所見が認められたという報告はこれまで
ありません。

しかしこれらの実験のほとんどが成熟した動物やせいぜい幼年期の動物を
用いた実験でした。

私たちは、「仮に飲み水が原因だとすれば、それらの患者さんは、発症する
壮/老年期になってその水を飲み始めたはずがなく、子供時代もその水を
飲んでいたはずであり、また母の体内にいる胎児のころから、胎盤を通して
その水を飲んだに違いない。さらに言えば、その未生の患者さんの両親となる
男女がその水を飲んでいたはずである。」と考え、実生活の実態にあった
実験を行うのであれば、胎児や子供時代、その前の父親、母親の代からの
影響も加味する必要があり、「2世代にわたる」研究が不可欠ではないか、と
考えたのでした。
このような実験はこれまで全く報告がありません。
実験には出来ればサルなど、ヒトに近いと言われる動物を使用したかったの
でしたが、これらの動物の寿命は長く、2世代に渡る実験をするには少なく
とも10年以上の月日が必要で、そのようなことから実験にはラットを使用
しました。


詳細は、
http://www.tmin.ac.jp/fukyu/news/2002/193/news193a.html

 

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