寄り添う、新・母子手帳 10年ぶりに改訂

[寄り添う、新・母子手帳 10年ぶりに改訂]

(朝日新聞  2012年4月4日)(もっと医療面)


母子健康手帳が4月から10年ぶりに改訂された。
保護者が妊娠中に自由に書き込める欄が大幅に増えたほか、赤ちゃんの便の色
見本など医療・健康情報も充実した。
新しい手帳を上手に活用するひけつを調べた。



<書き込める欄を増・SOS察知する質問・・・>
母子健康手帳は、妊娠した人なら誰でも市町村の窓口で無料でもらえる。
母子保健法に基づいて市町村が作る。
前半は厚生労働省が内容を省令で定めており、共通だ。
後半は、市町村が原則自由に作れるが、実際には大半の自治体が厚労省が
参考で示す内容を採用している。


今回の改訂ポイントについて、母子健康手帳に詳しい斎藤益子東邦大教授
(母性看護学)は「妊婦や父親が書き込む欄が増えた点」と指摘する。
妊娠4カ月以降、1カ月ごとに自由記載欄が設けられた。

妊娠中はちょっとした体調の変化でも不安になることがある。
ただ、いざ医療機関で医師や助産師と向き合うと、気後れして質問できな
かった、という妊婦は少なくない。

「自由記載欄にあらかじめ不安な点や疑問など、医師や助産師に質問したい
ことを記入してから受診したらどうでしょう。この欄を、医療従事者との
コミュニケーションを円滑にするために役立てて下さい」と斎藤さんは助言
する。

自由に書く欄を増やした別の目的について、斎藤さんは「妊婦さんが体調
管理や出産準備を、医師や助産師任せにせず、主体的に取り組むきっかけに
してもらうため」という。
出産は基本的に医師任せ、という受け身の姿勢の妊婦が過半数はいると斎藤さんはみる。最近、公費負担の妊婦健診の回数が従来の倍以上の14回に増えたことで、こうした傾向が強まっているようだ。

妊婦自身が妊娠のリスクや注意すべき症状を理解しやすいよう、年齢や持病
など妊娠のリスクや、強い頭痛やめまいなど、医師に相談した方がいい症状に
関する説明が加わった。

超音波検査で推計した胎児の体重を記録するグラフも掲載された。
「神経質になりすぎる必要はありませんが、胎児の発育状況の目安として
利用して下さい」と松田義雄東京女子医大教授(産科婦人科)は言う。

こういった情報は、松田さんが代表を務めた厚生労働省研究班が行った妊産婦
調査で、手帳に掲載して欲しいと要望されていた。


「子育てについて気軽に相談できる人はいますか?」
「不安や困難を感じることはありますか?」
改訂された手帳では、保護者が妊娠や子育てで支援が必要な状況にあると
SOSを出したり、医師や保健師らが支援の必要性に早く気づいたりできる
ような質問が増えた。
妊娠や子育て中の不安や問題が虐待の一因となる可能性もあるからだ。

早く治療した方がいい「胆道閉鎖症」に気づくように、赤ちゃんの便の色を
チェックする色見本も付いた。


子どもを感染症から守る予防接種の記録欄も充実した。
従来の母子手帳は、公費負担で打てる麻疹(はしか)やBCGなど「定期接種」
の予防接種については、接種した年月日やワクチンの製造記録などを記入する
欄は十分だった。
一方で、自費で接種する「任意接種」の欄が狭かった。
最近、任意接種の一部に公費補助が出るようになり、インフルエンザb菌
(Hib)や肺炎球菌などのワクチンを打つ子どもも増えており、保護者や
小児科医から、任意接種の欄の充実を求める声が出ていた。
予防接種の記録は、保護者の備忘録や、万が一、副反応が起きた時に役立つ。
子ども自身が親になる年頃になった時に、妊娠中に感染すると胎児に影響
が及ぶ可能性のある、おたふく風邪などのワクチンを接種していたかどうか、
確認することもできる。

南武嗣みなみクリニック院長(小児科)は「出産や、かかった病気、予防
接種に関する情報は子どもの健康管理に大切です。保護者が妊娠や子育ての
最中に手帳に書き込んだ記述は、子どもへの貴重な贈り物にもなります。
子どもが成人するまで大切に保管して下さい」と話している。


(大岩ゆり)(4月3日付朝刊生活面から)


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