パニック障害:フルタイムで働ける日を目指す

[スマイル写真館:フルタイムで働ける日を目指す]

(毎日新聞  2010年9月11日)


<体動かし、徐々に前へ>
午前6時。
トラックの荷台の中は既にむせ返るように暑い。
醤油や米、野菜を入れたプラスチックケースを倉庫から運び、次々と積み
込む。
汗だくになっていく体が心地よい。

労働者が出資し合って地域に役立つ仕事を創出する「ワーカーズコープちば」
の組合員として、生協の宅配サービスの荷積みをしている。
4年前に始め、今は週5日、1日3時間。
「フルタイムで働くのが目標です」と目を輝かせる。


警察官の父は厳格で、聞いてほしいことを言えずに育った。
高校時代に「大学を出て公務員になれ」と言われた時は、得意な英語を
生かせるホテルマンになろうと、意志を貫き専門学校に進んだ。


20歳になって就職先を考え始めたころ、背中に経験したことのない張りを
感じた。
振り返ると変調の始まりだった。

半年後、地下鉄の中で突然、動悸と脂汗に襲われた。救急搬送されたが、
医師は「異常なし」。
翌日から家を出られなくなり、メンタルクリニックで「パニック障害」と診断
された。

級友たちは社会へ巣立っていくのに、自分は卒業式にも出られない。
就職したくても、電車に乗るのが怖い。
「だめな自分」に行き詰まり、やり場のない怒りを家族に向けた。


そんな時、テレビである医師が「青年期の自立における葛藤」について語って
いるのを見た。
「僕のことだ」
その医師の元に通うようになった。
口からあふれる父への不満を、医師は「ちゃんとお父さんに伝えよう」と
言った。

不登校や引きこもりの集まりにも顔を出し始めた。
徐々に働けるようになってから、同年代に体験を語ったり、親の相談を受ける
こともある。

子の話を聞かず、良かれと先回りする親を見るたび「もっとコミュニ
ケーションを取ればいいのに」と思ってしまう。

最近は父が話を最後まで聞いてくれるようになり、自分も父の話を落ち着いて
聞けるという。


家族って何だろう。
尋ねると、こう返ってきた。
「本当につらい時、相談しあえる存在でしょう」




(磯崎由美)




http://mainichi.jp/life/health/news/20100911ddm013100121000c.html





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