ミトコンドリア・イブとY染色体アダム

[ミトコンドリア・イブとY染色体アダム]

(Wikipedia)


ミトコンドリアDNAは必ず母親から子に受け継がれ、父親から受け継がれる
ことはない。

したがってミトコンドリアDNAを調べれば、母親、母親の母親、さらに母の
母の母の・・・・と女系をたどることができる。
(父親の系統を遡ることはできない)

またミトコンドリアDNAは組換えを経ることがないため、個々人の
ミトコンドリアDNAの違いは突然変異のみによると考えることができる。
突然変異は、中立説にもとづくなら、その発生頻度は経過した年月と相関
すると考えられている。

すると、2つの民族間でDNA配列がとてもよく似ているということは、
分かれた後に起きた突然変異が少ないと言うことで、より最近にわかれた
民族であるということを示す。

逆にあまり似ていない配列は、たくさんの突然変異を蓄積してきたと考え
られ、古い時代に分かれた遠い民族であるという基本的原理が成り立つ。

このように、ミトコンドリアDNAの違いの多少を調べていくと、いつごろ、
どこでミトコンドリアDNAの違いが発生し始めたかが推定できる。

すなわち全ての人類の母親にたどり着けるのではないか、と考えることが
できる。

つまり、ミトコンドリアイブはより正確に言えば「現生人類の最も近い共通
女系祖先」だと言える。


分析の結果、場所的には1人のアフリカの女性にたどり着き、時間的には、
(キャンらは分子時計の理論により、突然変異の蓄積の速度を仮定し計算を
行ったところ)人類の仮想上の共通の母親は、約16±4万年前、つまり最大で
20万年前に存在すると結論づけた。

この論文は、科学雑誌ネイチャーに1987年に発表されたものである。

この論文はダーウィンも推測した「人類のアフリカ起源説」を裏付ける証拠で
あった。


しかし、後に最大値の20万年前が一人歩きし、ヒトがそれまでの説より数万年
さかのぼり、20万年も前から存在したことが証明されたという誤解を生じた。
この結果は、2000年にネイチャー・ジェネティクス誌において発表された、



スタンフォード大学のピーター・アンダーヒルとカヴァッリ・スフォルツァ
らのグループによる父親から息子にのみ伝わるY染色体を用いた同様の検討に
よっても、ほぼ同じパターンが確認された。
これは「Y染色体アダム」と呼ばれることがある。

Y染色体アダムは6万年前頃に生存していたと見られるが、当然のこととして
ミトコンドリア・イブの夫である可能性はない。



<よくある誤解>
これらの科学的成果は一般にも大変興味のあるところであり、たちまち広く
知られることとなったが、同時に誤解をうむことともなった。

特に「すべての人類はたった1人の女性からはじまった」とするものがある。
正しくは、「すべての人類は母方の家系をたどると、約15〜30万年前に
生きていた1人の女性にたどりつく」ということである。

この2つの言い方は、方向が逆であるだけでなく、本質的に異なる。

ミトコンドリアは女性からしか伝わらないため、男性は自分のミトコンドリア
DNAを後世に残すことができない。
女性は自分が産んだすべての子にミトコンドリアDNAを伝えるが、その子らが
すべて男性だった場合、彼女のミトコンドリアDNAは孫に受け継がれずに
途切れる。
もし子に女性がいても、娘が産んだ孫に女性がいなければ、やはりその家系の
ミトコンドリアDNAは廃れる。

つまりある個人のミトコンドリアDNAが子孫に伝わるためには、その間の
すべての世代に少なくとも1人は女性が産まれなければならない。

ミトコンドリアDNAの系統は常に減っていくことになる。
つまり、現在の人類の母親をどんどんたどっていくと、ある1人の女性に
たどりつく。

しかし、その同時代には他にもたくさんの女性がいて、家系図の母系だけを
たどるのではなく、母系をたどりつつたまに父系をたどる、のような遡り方を
すれば彼女達にたどりつくこともできる。

すなわち、その時代のたった1人の女性から人類全てが生まれたというわけ
ではないのである。

ミトコンドリアイブは特定の女性を指すのではなく時代によって変動する。

もしも仮に5万年前の人類のミトコンドリアDNAサンプルを得たならば、
そこから遡ったミトコンドリア・イブは、現代人にとってのミトコンドリア・
イブよりも古い時代のひとりの女性を指し示すであろう。

同様に、現代に生きている女性のうちの誰かが数十万年後のミトコンドリア・
イブとなる可能性もある。

ミトコンドリア・イブ自身は、女系を通してたくさんの子孫に恵まれたという
以外、何も特別な点はない。



<マスコミ>
ミトコンドリア・イブとは、人類の進化に関する学説に対してマスコミが
名付けた愛称で、「アフリカ単一起源説」を支持する有力な証拠の1つで
ある。


カリフォルニア大学バークレー校のレベッカ・キャンとアラン・ウィルソンの
グループは、できるだけ多くの民族を含む147人のミトコンドリアDNAの塩基
配列を解析した。
これを元に彼らは全てのサンプルを解析し系統樹を作成した。

すると、人類の系図は2つの大きな枝にわかれ、ひとつはアフリカ人のみから
なる枝、もう1つはアフリカ人の一部と、その他すべての人種からなる枝で
あることがわかった。

これはすなわち全人類に共通の祖先のうちの一人がアフリカにいたことを示唆
する。


このように論理的に明らかにされた古代の女性に対してマスコミが名付けた
名称が「ミトコンドリア・イブ」である。


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[備考]


テレビ番組で、女優の天海祐希さんのミトコンドリアDNAを遡ったところ、
バイカル湖周辺出身である可能性が高いという結論に至った。

日本人の何割かがバイカル湖周辺出身であると考えられている。


飢餓の時代が長かったために「インスリン」の働きが弱くなり、糖尿病
予備軍が日本人に多い理由の一因であろうとする説もある。


(横山歯科医院・横山哲郎)


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