ラベンダー等の香り 鎮静効果の回路が明らかに

[ラベンダー等の香り 鎮静効果の回路が明らかに]

(家庭の医学  2019年5月13日)

<不安を鎮める香り>
ハーブの中でも人気の高いラベンダー。
ドライフラワーやポプリ、アロマオイルやスプレーなど、さまざまに製品化
されています。

この香りに含まれる成分は落ち着きをもたらす、リラックスするなどと
されますが、実際どのように体内に取り込まれて効果を発揮するのか、
その仕組みが鹿児島大学の研究チームによって解明されました。

研究された成分は、リナロールという、ラベンダーの主要な香気。
リナロールは、実はラベンダーのみならず、ローズウッド、ミント、
ベルガモット、ネロリ、シナモンなど、さまざまな植物に含まれる
香気成分で、鎮痛・鎮静・抗炎症効果、不安をやわらげるリラックス効果
などがあるとされています。
また天然だけでなく、人工的に作り出すこともできる成分です。

研究は、鹿児島大学医歯学総合研究科などのグループによって行われました。

リナロールを嗅がせたマウスと嗅がせないマウスを、明暗箱という明るい
エリアと暗いエリアを往来できる装置や高架式十字迷路といったマウスの
行動を観察できる実験装置に入れて、比較観察しました。
こうした実験は、抗不安薬の薬理効果を調べるテストなどでも行われて
います。

すると、リナロールを嗅がせたほうが嗅がせないマウスよりも明るいエリアに
滞在する時間が約2倍長かったり、明るいエリアに入る回数が多いなど、
抗不安薬と同様の効果が得られました。

また、リナロールを嗅がせたマウスを迷路に入れると、嗅がせなかった
マウスよりも周囲の探索を活発に行うことがわかり、不安を感じて迷路内で
立ち止まってしまう傾向が減り、よりリラックスできることが観察され
ました。

さらに、嗅覚を破壊したマウスと破壊しないマウスで同様のリナロールを
嗅がせた比較実験をおこなうと、嗅覚を破壊したマウスにはこの変化が
見られず、リナロールの成分が肺やその他の皮膚粘膜から浸透したのではなく
嗅覚を通して脳神経(嗅覚中枢)に達したことがわかりました。

視床下部にあるオレキシン神経という部分が刺激・活性化されることで、
鎮痛効果がもたらされるといいます。

実験によって、抗不安薬として一般に用いられているベンゾジアゼピン系
薬剤で得られる不安軽減効果が、リナロールの香気成分でもみられることが
わかりました。

それに加えて、リナロールの場合、ベンゾジアゼピン系薬剤の副反応である
運動障害が見られなかったため、将来、より安全な新しい抗不安薬の開発にも
つながる可能性があるのではないかと期待されています。

アロマテラピーはすでに女性を中心に好まれ、香りによって気分がよくなる
ことを実感する人が増えています。
有効成分がはたらくメカニズムが科学的に解明されることによって、生活上の
活用にも信頼感が高まり、医薬品への応用もすすむかもしれません。

(監修:横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義)

https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/126022/

No tags for this post.
カテゴリー: き嗅覚, せ生理学 パーマリンク