アムステルダム・スキポール空港 男性用便器のハエ

[行動経済学「ナッジ」で健康対策]

(家庭の医学  2018年10月4日)


<無意識によいほうを選ばせる!?>
「ナッジ」という言葉を聞いたことはありますか?
2017年ノーベル経済学賞を受賞した米国のセイラー教授らが発案した
行動経済学の手法で、応用すると公共政策や医療、健康分野などに広く
貢献できるとして注目されています。

「ナッジ(Nudge)」とは、背中を押す、または肘で軽く突っつくという
意味。
行動経済学においては、望ましい行動を選択できるように、強制的ではなく
そっと後押しする手法を指します。

たとえば、何か望ましい行動をとってほしいと考えた場合、「○○しなさい」
「○○すべきだ」と強制するのではなく、人の心理や行動の傾向を利用して、
無意識に・自発的に望ましい行動をとってもらうようにするものです。

有名なのが、アムステルダムのスキポール空港でのエピソードです。
これは、男性用便器の真ん中にハエの絵を描いたところ、清掃費用を大きく
削減できたというもの。
的があるとそこに狙いを定める、という心理的分析に基づいた対策でした。

実は身のまわりでも、人の心理を活用した手法は取り入れられています。
例えばタイムセールや限定○個といった制限をつけられると、それほど必要
ではないのに購買欲が湧くといった経験はないでしょうか。
ナッジはこのような行動心理を、公共政策の手法に取り入れたものです。

健康無関心層へのアプローチとしても、このナッジの考えが取り入れられる
ようになってきました。
各自治体が行っている「健康ポイント制度」もその一つ。
たとえば、健康診断の受診、ウォーキング、健康イベントの参加などで
ポイントがもらえ、商品と交換できるというもの。
ポイントを貯める行為が、自然と健康への意識を高め、運動の実践を
促します。

実際、成人の約7割が健康づくりに関心を持たない「健康無関心層」である
ことがわかっています。
厚生労働省も、どのような働きかけをしていけばよいか課題として取り上げて
いるほど。
これからも、ナッジの手法を取り入れた健康対策が行われていくことが
考えられるでしょう。


(監修:横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本晴義)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125524/




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