[<抗菌薬>乳幼児は服用注意を アレルギー発症率1.7倍]
(毎日新聞 2018年5月2日)
ペニシリンなどの抗菌薬を2歳までに服用した乳幼児は、ぜんそくやアトピー
性皮膚炎など免疫異常によって起こるアレルギー疾患の発症リスクが、服用
経験のない乳幼児と比べ1.4~1.72倍になるとの調査結果を、国立成育医療
研究センターのチームがまとめた。
抗菌薬は疾患によって必要なケースはあるが、効果の薄いウイルス性の風邪
にも使われ、社会問題化している。
チームは「不適切に使うと、子どもの健康を損なう恐れがある」と指摘する。
調査は、2004年3月~2006年8月に生まれた日本人の乳幼児を対象に実施。
2歳までに抗菌薬を服用した436人と、服用経験のない466人を5歳時点で
比べ、アレルギーのぜんそくや鼻炎、アトピー性皮膚炎の発症に差があるかを
調べた。
抗菌薬を服用した乳幼児は、服用経験のない乳幼児より、
・ぜんそくで1.72倍
・鼻炎で1.65倍
・アトピー性皮膚炎で1.4倍
リスクが高かった。
中でも、多種類の細菌に効くタイプの第3世代セファロスポリン薬は、効く
細菌の種類が少ないペニシリンと比べ、ぜんそくで1.63倍、鼻炎で3.14倍
高かった。
詳細は不明だが、抗菌薬によって免疫の制御に重要な腸内細菌がいったん死滅
するため、チームは「悪化した腸内環境がアレルギー疾患の発症につながって
いる可能性がある」とみている。
抗菌薬を巡っては、多用することで薬の効かない耐性菌が出現しやすくなる
ほか、湿疹や食物アレルギーのリスクが高まるとする海外の研究報告もある。
国は抗菌薬の適正使用を推進する行動計画を2016年4月に発表し、
2020年までに使用量を2013年比で33%減らす目標を掲げている。
調査した同センターの山本貴和子医師(アレルギー科)は「5歳以降でも
アレルギーの症状が続くかは今後の検討課題だが、抗菌薬の不適切な使用は
やめるべきだ」と話している。
研究成果は、米国のアレルギー・ぜんそく・免疫学会誌で発表した。
(渡辺諒)
<正しく選択し使用を>
小児の感染症に詳しい国立成育医療研究センター感染症科の宮入烈医長の話
細菌によって重症化した肺炎や敗血症、細菌性髄膜炎などでは必要不可欠な
ケースもあるため、医師らが正しく抗菌薬を選択して使用することが重要だ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180502-00000006-mai-soci
————————————————–
[関連ページ]
・風邪に抗菌薬は使わない!
・半分は不要な抗菌薬 処方医師の特徴は
・小児の抗菌薬にかかる費用 米国は英国の5倍
・ニューキノロン系抗菌薬で網膜剥離リスクが4.5倍に―カナダ研究
・内服薬光線過敏症:サイアザイド系降圧利尿薬、ニューキノロン系抗菌薬
・農業用の抗菌薬が食物アレルギーと関連
・新規抗菌薬、候補なし 厚労省研究班で報告 危機的状況
————————————————–