30代がクサい! ミドル脂臭って何?

[30代がクサい! ミドル脂臭って何?]

(読売新聞  2017年12月19日)
(コラム 五味院長の「スッキリ! 体臭で悩まなくなる話」)


<加齢臭よりも強烈>
中高年男性の加齢臭ばかりが注目されますが、若い30代の男性にも特有な
ニオイがあります。
ある化粧品メーカーが成分を特定し、「ミドル脂臭」と名づけました。
その正体は「ジアセチル」という物質です。
実際に嗅いでみると、相当なものですよ。
加齢臭の成分であるノネナールの比ではありません。
このジアセチルは、お酒や酢の醸造でも発生することがあり、かすかな量でも
製品を台無しにしてしまう厄介者なのです。
とりわけ女性が不快感を催すニオイであるところから、「つわり臭」とも揶揄
されます。

働き盛りの男性にしてみたら、どうでしょう?
そんなに臭うとなれば、職場の女性や交際相手、友達……次々と人間関係が
気になってきて、物事に打ち込めませんね。

しかし、このジアセチル。
実は、性別も年齢も問わず、誰からも出ているニオイなのです。

それが30代男性に特有なニオイとされた理由は、この世代を取り囲む環境に
由来します。
順を追って説明しましょう。



<疲労とストレスで強まる>
ミドル脂臭は「脂くさいニオイ」と表現されますが、実際には汗から出る
ニオイです。
私たちは疲れると、体内で「疲労成分」といわれる乳酸を作り出します。
乳酸が汗と一緒に出たのを、皮膚にいる細菌が分解し、ジアセチルになるの
です。
つまり疲労がたまって乳酸が増えると、ジアセチルも多く発生するわけ
ですね。

乳酸が多くできるのは、酸素を十分に使わないで体内のエネルギーを消費する
ときです。
無酸素の運動や、無意識に息を詰めるような場面に伴って増えます。

30代は、忙しい忙しいで、息もつかずに動き回る。
仕事仕事で疲労困憊、残業残業で遅くなり、睡眠不足で慢性疲労。
これでは乳酸が溜まるのも当然。

重ねて、汗のかきかたにも問題があります。
30代は中間管理職というライフステージで、上からも下からも受ける諸々の
ストレスで、緊張による汗をかくことも多いでしょう。
典型的なものが冷や汗です。
これは一気にどっとあふれるような汗で、乳酸などの血液成分を多く含んで
います。
汗をかく部位にも特徴があり、首から頭にかけて特に出やすいため、ミドル
脂臭も頭から首の後ろにかけて強くなるといわれています。

ミドル脂臭の原因は、ジアセチル単独ではありません。
ジアセチルは他の体臭と一緒になると、相手が少量でもニオイを強くする
傾向があり、特に皮脂腺から出るニオイを強くしてしまいます。
この皮脂の分泌は、30代のミドル世代が最も盛ん。
ミドル脂臭が「古い脂のニオイ」に感じるのは、汗からのジアセチルと皮脂の
ニオイが混ざり合うからなのでしょう。



<対策は自分をいたわること>
原因とメカニズムがわかれば、対策も立てられます。
まずは、今日の疲れを明日に持ち越さないことです。
それには、入浴が一番。
忙しくてもシャワーで済ませず、ゆっくりバスタブに浸かって、汗も
ストレスも流すこと。
体が温まると、腎臓がリフレッシュされて乳酸の排出のために頑張ってく
れます。

それから頭と首の後ろを念入りに洗うことです。

日頃からストレスをためないことも大事です。
ストレスは緊張性の発汗につながり、抗酸化力も弱めるため、皮脂の酸化を
進めます。
ニオイ予防のためにも、リラックスできる趣味や場所を探してください。
「自分は仕事が生きがいだ」という人も、せわしく動き回らずに、意識的に
ゆっくりとした呼吸をするように努めてください。

余暇に有酸素運動をするのも、良い汗をかくために有効です。
良い汗というのは、さらさらして濃度の薄い、べとつきの少ない汗です。
乳酸などの血液成分が少ないのでジアセチルもあまりできません。

食事は、加齢臭の対策に準じます。
海藻や緑色野菜などの抗酸化食品をとるように心がけてください。
気分転換のお酒は、飲み過ぎない限りOKです。

ここまで書いてお分かりいただけたことでしょう。
最も有効な「ミドル脂臭」対策とは、「いま・ここ」をひたむきに生きている
あなた自身を、大事にいたわることに尽きるのです。



(五味常明 五味クリニック院長)



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171219-OYTEW235742/?catname=column_nioi





カテゴリー:  体臭, ひ疲労 タグ: パーマリンク