ラプンツェル症候群

[髪の毛が食べたくなる?「ラプンツェル症候群」とは]

(Mocosuku  2017年11月2日)

          執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
          医療監修:株式会社とらうべ

童話『ラプンツェル』は、世界的に有名なグリム童話のひとつです。
この童話は映画化もされていますから、ストーリーをご存知の方は多いかも
しれません。

それでは、この童話にちなんだ「ラプンツェル症候群」という病気については
いかがでしょうか?
今回はこの「ラプンツェル症候群」について、ご紹介いたします。

<ラプンツェル症候群について>
ラプンツェル症候群とは、髪の毛が食べ物ではないと判断できる年齢で
あるにもかかわらず、自分の髪を食べてしまう精神疾患です。
グリム童話『ラプンツェル』に出てくる主人公が長い髪の持ち主であること
から、「ラプンツェル症候群」と呼ばれています。

専門的には「食毛症」といい、まれな病気ですが、患者は10代の女性に多いと
いわれています。

<ラプンツェル症候群は「異食症」の一種>
食毛症は、食べ物ではないものを継続的に摂取してしまう「異食症」の一種
です。

米国精神医学会が出版し、日本の臨床現場でも用いられている『精神疾患
の分類と診断の手引き第5版(DSM-5)』によると、次に該当する場合は
異食症と診断されます。
 ・少なくとも1カ月間にわたり、非栄養的非食用物質を持続して食べる
 ・非栄養的非食用物質を食べることは、その人の発達水準からみて不適切で
  ある
 ・その摂食行動は文化的に容認される慣習でも、社会的にみて標準的な
  慣習ではない
 ・その摂食行動が他の精神疾患〔例:知的能力障害(知的発達症)、
  自閉症スペクトラム症、統合失調症〕や医学的疾患(妊娠を含む)を
  背景にして生じる場合、特別な臨床的関与が妥当なほど重篤である

今回取り上げる「食毛症」は、毛髪や毛糸、毛布などを好んで食べてしまう
病気ですが、異食症患者の中には、紙、石、砂、土、消しゴム、絵の具、
チョークなどを食べてしまう症状の人もいます。

<ラプンツェル症候群の原因>
食毛症をはじめとする異食症は、次の因子が関係していると考えられて
います。
 ・鉄や亜鉛などの摂取不足
 ・鉄欠乏性貧血
 ・回虫感染症
 ・精神発達遅滞
 ・自閉症スペクトラム障害
 ・精神疾患
 ・精神的ストレス

また、食毛症のケースでは、抜毛(ばつもう)行為(自分の体毛を抜く)を
繰り返す、「抜毛症」との関連が指摘されています。
抜毛行為をする理由の多くは、日常生活におけるストレスや孤独感、寂しさを
紛らわすためといわれています。

ですので、食毛症もストレスや孤独感などが原因であると考えられています。

ところで、ランプンツェル症候群になって毛髪や毛糸などを食べ続けても、
身体に悪影響はないのでしょうか?

<ラプンツェル症候群が身体に与える影響>
毛髪を食べ続けると、胃液や粘液の作用により、胃の中で食べ物などと
結びつき、石のような固まりができることがあります。
これを「毛髪胃石)」といいます。

毛髪胃石は、できた直後に自覚症状はみられません。
ただし、ある程度の期間を経て毛髪胃石が大きくなると、腹痛や悪心、
おう吐、食欲不振、腹部不快感、体重減少などの症状が現れるように
なります。
また、腸閉塞や潰瘍、穿孔(胃に穴が開くこと)などを合併することも
あります。

できてしまった毛髪胃石は、薬での治療は困難で、内視鏡手術や開腹手術が
必要です。

<ラプンツェル症候群の治療>
毛髪胃石や身体疾患を合併した患者さんには、症状にあわせた内科的あるいは
外科的な治療が行われます

ただし、根本的治療には、心理カウンセリングなどの精神的なケアが欠かせま
せん。
これまでの症例には、発症後、本人と両親に対して心理カウンセリングを
行うとともに、発症のきっかけであるいじめ問題を解消したことで症状が
見られなくなった、という報告もあります。

「自分の髪を食べてしまう」という行為は、とても奇妙に感じられるかも
しれませんけれど、それは本人が発するSOSのサインなのです。

ラプンツェル症候群の人は、10代やそれよりも若い層に多いため、本人に
自覚がないケースも多々あります。

皆さんの周囲に、髪を食べてしまう行為を繰り返している人がいたら、まずは
そのSOSサインを察知し、話を聞いてあげてみてください。

https://www.excite.co.jp/News/column_g/20171102/Mocosuku_42410.html

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