火薬が心臓病を治す?

[こんなにも面白い医学の世界 第1回 火薬が心臓病を治す?] (レジデントノート  2014年10月号掲載) 狭心症発作のときにニトログリセリンを使うことは、皆さん知っていると 思います。 このニトログリセリンは、ダイナマイトの原料でもありますが、火薬がなんで 狭心症に使用されるようになったんでしょう? 昔ヨーロッパで、火薬工場で働いていた作業員が、休暇明けに出勤して仕事を はじめると、ひどい頭痛やめまいに悩まされるという苦情が相次ぎました。 一方で、狭心症を患う従業員が、自宅では発作が起こるのに工場では起こら ないというエピソードがあり、これに注目した医師が「火薬には血管を拡張 させる作用があるんじゃないか?」と考えて研究したことで発見されたと いわれています。 このメカニズムは長年未解明だったんですが、1990年代になって、ニトロ グリセリンが加水分解されて硝酸ができ、さらに還元されて一酸化窒素 (NO)が産生され、それが血管拡張のシグナル伝達物質である、という ことが発見され、1998年のノーベル生理学・医学賞の対象となりました。 一酸化窒素(NO)のような気体が、血管拡張や神経伝達、免疫反応の メディエーターとして働いているという発見は、生理学や薬理学の発展に 大いに貢献し、世界を大きく変えたといっても過言ではありません。 ちなみに、現在医薬品として使われている硝酸化合物は、硝酸イソソルビド などのニトロ基をもつ硝酸系の薬品が主で、医薬品のニトロをいくら集めても 爆薬にはならないし、医薬品が爆発事故を起こすこともありませんよ。 (岡山大学医学部 救急医学  中尾篤典先生) https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115391.html
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