増える過換気症候群

[増える過換気症候群] (あなたの健康百科) <過剰な深呼吸を繰り返す  〜不安や緊張が契機に〜> 内科外来を受診する人の約3%に見られる「過換気症候群」。 若い女性に多いとされているが、最近は男女とも幅広い年齢層で見られる。 今後、さらに増加が予測されている。 <空気が吸えない> 過換気症候群は多くの場合、不安や緊張、あるいは喜び過ぎなど、情動の 変化をきっかけに、過剰な深呼吸を繰り返し起こす病気。 日本大学医学部付属板橋病院(東京都)心療内科の村上正人科長は次のように 話す。 「本来、肺胞の中には一定の二酸化炭素が保たれ、体の酸性とアルカリ性の バランスを整えています。ところが、頻繁な深呼吸によって二酸化炭素が排出 されると、血液がアルカリ性に傾き、脳血管が収縮していろいろな症状を 起こすのです」 主な症状だけでも (1)呼吸器症状 (2)循環器症状 (3)神経症状 が挙げられている。 「呼吸器症状では『空気が吸えない』『空気が薄い』といった特徴的な訴えを する人が多いのです」 <パニック障害と重複も> 循環器症状は、心臓が苦しい、どうきが激しいなど。神経症状としては口や 手足のしびれなどだ。 「こうした身体症状から激しい死の恐怖に襲われ、救急車で搬送されることが あります。パニック障害の症状とよく似た点があり、約半数は2つの疾患が 重なっているといわれています」 脳卒中などと似た症状が見られる脳の病気が原因の場合も少なくないが、 過換気症候群を起こしやすい人は、性格やライフスタイルの関与が大きいと されている。 例えば、仕事が忙しい、課題が多い、競争が激しいといった切迫感や強迫感が 日常的にあり、それを強く感じて、過剰に反応する性格の人が起こしやすいと いう。 村上科長は「ストレスなど刺激の受け方は個人差が大きいのですが、常に 神経が興奮した状態にあると、ちょっとした刺激でも反応しやすいことは 容易に想像できるでしょう」と話す。 <静かに呼吸し、楽しいことを思う  〜「紙袋再呼吸法」が有効〜> 呼吸が乱れることは誰にでもあるが、必ずしも過換気症候群を起こすとは 限らない。 では、なぜ発症するのか。 また、その治療は? <死ぬ病気ではない> 村上科長は「過換気症候群は、過剰に高い活動性を持っていて、交感神経が 優位に働いている人に多いのです」と話す。 自律神経には交感神経と副交感神経があり、日中の活動時間には交感神経が 優位に働く。 休息や睡眠時間が少なく、仕事をやり続けたりすると、当然、交感神経の 働きは活発になる。 その結果、日常生活で過剰な興奮状態が続き、そこに精神的な動揺などの 刺激が加わると、交感神経がさらに興奮して発症に結び付く。 「発作が起こると、肺や心臓に何か起こったのではと恐怖感が先行しがち ですが、死に至る病気ではないことを認識してください。できるだけ静かに 呼吸して安静にし、意識して楽しいことを思うなど、気をそらせると有効 です」 <生活習慣の見直しを> 周囲の人は、慌てずに語り掛け、リラックスして呼吸するようにリードして あげる。 また、「紙袋再呼吸法」を行うと効果的だ。 「吐き出した空気を再び吸うことで、不足している血液中の二酸化炭素を 補うのです。ただし、紙袋を口と鼻に密着させると低酸素血症を引き起こす ので軽くかぶせるようにしてください」 特に、ビニール袋を代用する場合は、注意が必要だ。 こうした処置で改善されないときは、最寄りの内科を受診するとよい。 「治療には、抗不安薬やSSRIという抗うつ薬が用いられますが、問題は再発を 繰り返すケースです。その予防には、病態を十分に理解して、ライフスタイル を見直すことが大切です」 その具体策は人によって異なるが、村上科長は「基本的には、人並みに休息を 取って、日常の緊張度を下げるように」と勧めている。 http://www.medical-tribune.co.jp/kenkou/200603282.html
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