コーヒーは幻覚を引き起こす

[コーヒーは幻覚を引き起こす?]

(National Geographic News  2009年1月15日)


コーヒー好きの人は注目してもらいたい。
世界で最も普及している“向精神薬”とも言えるコーヒーは、一部の常用者に
対して知覚に障害を起こすような作用を隠し持っている可能性がある。

最新の研究によると、コーヒーや紅茶、栄養ドリンクなどカフェイン入りの
飲料を多量摂取する人は、幻覚や幻聴を体験する可能性が高く、死者が存在
しているように感じることさえあるという。


この研究は200人の被験者を対象としたもので、1日にコーヒー7杯分に
相当するカフェインを摂取する人の場合、1杯以下の人と比較して幻覚を
体験する傾向が3倍になることが判明した。

研究チームのリーダーで、イギリスにあるダラム大学の博士課程で心理学を
専攻しているサイモン・ジョーンズ氏は次のように話す。
「非常に興味深い相関関係が明らかになったが、因果関係の特定には注意が
必要だ。今回の研究は必ずしも、“カフェインが幻覚を引き起こす”ことを示す
ものではない。データから考えればこのような推論は妥当だと考えていが、
“幻覚症状を持つ人は不安や心配事が多いため、消費するカフェインの量が
増える”という逆の因果関係の可能性もある」

カフェインは、意識の鋭敏化やエネルギーの増強、気分の向上といった効果が
あるため広く愛用されている。

大衆に広く人気のあるこの“薬物”の影響については、これまで数多くの
専門家が熱心に探求してきた。

ある研究では、頭痛などの痛みを和らげ、ぜんそく症状を軽減するといった
効果を示す可能性が明らかにされている。

また、カフェイン摂取はガンや乳腺線維嚢胞症、骨粗鬆症と関連性を持つと
指摘する研究もある。


アメリカ食品医薬品局(FDA)では、カフェインを“一般に安全と認め
られる”食品添加物としてGRAS(Generally Recognized As Safe)リストに
掲載している。
大半の専門家も、1日最大300ミリグラムほど(380ミリリットルの
コーヒーで1~2杯分、380ミリリットルのソーダ缶で6~8本分)の適度な
消費量であれば危険はないという点で意見が一致している。

ジョーンズ氏の率いる研究チームは、カフェインが、コルチゾールと呼ばれる
ストレス関連ホルモンの生産量を増加させるなど、ストレスの生理作用を増強
して幻覚体験を引き起こす可能性があると論じている。

今回の最新研究は、「Personality and Individual Differences」誌に掲載
されている。

ジョーンズ氏は、「幻覚症状を虐待や死別などの心的外傷体験(トラウマ)と
関連付けている研究もある。こういった体験があると人はストレスに対して
敏感になる可能性がある」と指摘した。


アメリカにあるハーバード・メディカルスクールの行動薬理学者ジャック・
バーグマン氏は、今回の研究を受けて次のように話す。
「カフェインを大量に摂取すると、神経過敏など有害な副作用が生まれる
ことがあり、通常はあまり過剰に摂取しないように抑制メカニズムが働く。
限度を超えたカフェインの過剰摂取は幻覚症状を引き起こすこともある。
幻覚は一種の知覚障害で、カフェインの過剰摂取が引き金を引くとする
調査研究はこれまでにも複数存在している。場合によっては、“星が見える”
とか“雑音が聞こえる”といった単純なものではなく、もっと複雑な幻覚体験を
引き起こすこともあるだろう」
「また、カフェインの過剰摂取は人によっては妄想反応を生み出すことが
あり、これにより知覚障害体験が強化される可能性がある。ただし、精神病性
うつ病などの精神状態にある場合、カフェインを含め多くの薬物の効果が
ゆがめられることが良くある。このよう場合は、身体が過剰摂取に対して
どのように反応するのかを予測するのが困難だ」


研究を行ったジョーンズ氏は、今後も研究を重ね、栄養素と知覚障害の
関連性について実証していく予定だという。
「深刻な幻覚に悩まされている人を対象に、食事に含まれるカフェインや
糖類、脂肪の摂取量を変化させて幻覚症状が改善できるか調査してく
つもりだ」とジョーンズ氏は今後について話した。




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