アスリートはかぜをひきやすい

[アスリートはかぜをひきやすい?]

(家庭の医学  2020年4月27日)

<運動と免疫力の関係性って?>
身体能力の高いトップアスリートは、健康そのものに見えますが、
じつは激しいトレーニングによって免疫力が低下し、むしろかぜなどを
ひきやすいことがわかってきました。
もちろん、アスリートはそのためのメンテナンスや栄養管理などを
しています。

運動が免疫に与える影響を知っておくと、私たちの健康づくりにも
役立ちそうです。

アスリートがハードなトレーニングのあとでかぜをひきやすくなることは、
スポーツドクターの間ではよく知られた事実です。
オリンピック選手村で発生する病気のトップは、かぜ。
屈強でかぜもひかない強靱な肉体というイメージとは違うようです。

運動の量や強度と感染のリスクの関連を示した「Jカーブ」モデルによれば、
運動不足の場合より、適度な運動をしたほうが、感染リスクが低下します。
ただし、過度な運動になると逆に感染のリスクが高くなってしまいます。

適度な運動とは1日数十分程度の軽いジョギングなどをさし、過度の運動とは
フルマラソンを走るようなレベルをさします。
では、なぜ過度な運動で免疫力が低下してしまうのでしょうか。

激しい運動をすると、肉体的に強いストレスを受けるため、免疫力の指標の
1つであるナチュラルキラー細胞の活性が低下してしまうほか、ストレス
ホルモンといわれるコルチゾールが多量に分泌され、免疫が低下する
からではないかといわれています。

また、血液中に含まれる免疫グロブリンA(IgA)という物質には、
体内に侵入した病原体を排除する働きがありますが、過度な運動をすると
IgAが低下することもわかっています。

このほか、運動中は血液が体の中心に集中し、皮膚の表面や粘膜など
体のバリア機能を担っている場所には不足しがちになるため、
病原体が侵入しやすくなるともいわれます。

アスリートの場合はそうした影響を補うために、スポーツトレーナーが
全身をメンテナンスしたり、栄養士が食事の指導をするなどして体調管理を
していますが、そうしたアフターケアをせず過度な運動を続けてしまうと、
せっかくの運動が弊害にかわってしまうことがあります。

健康維持が目的なら、体調や年齢に応じた内容で1日1時間程度の運動で
十分でしょう。

しかしながら、学校の部活動、大人の習い事や趣味でも、試合を控えて
激しいトレーニングが必要になる場合もあります。
それなりに激しいトレーニングをしながら、かぜをひかないように
するためにはどうすればよいのでしょうか。

かぜ予防の基本は、感染経路を断つための手洗いです。
汚れたと感じなくても、あらゆる場所に触れる手は、細菌やウイルスが
最も付着しやすい場所。
いろいろなところを触った手で、鼻や目、口などを触れば、粘膜から
ウイルスが侵入してしまいます。

せきが出ている人に対しては、マスクをつけることが推奨されます。
予防のためのマスクはあまり意味がないといわれますが、多くのかぜが
上気道炎を招くことから、せきやくしゃみが出るときにはマスクをつけ、
うがいをしたり適度な水分をとって、気道を保護しましょう。

また、バランスのよい食生活と十分な睡眠をとって、体の抵抗力を高めておく
ことも大切です。
食事では、肉や魚、卵、大豆、乳製品から良質なたんぱく質をとることが
大事。
とくに運動後のたんぱく質摂取は、疲れた筋肉の回復を早める効果も
あります。

さらに、野菜や果物、ナッツ類からビタミン、ミネラルをしっかりとることも
不可欠です。
たとえば、ダイエットのために、プロテインドリンクだけで食事を済ませて
しまうなどはNG。
必要な栄養素は食事でとることが基本です。

そして、免疫力低下を防ぐためにはしっかり休む、眠ることも重要な
ポイント。

運動と休息のバランスをとり、感染リスクの高い場所には行かないといった
予防策も心がけましょう。

(監修:医療法人誠医会 宮川病院 内科 宮川めぐみ)

https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/126782/

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