[健康飲料からむし歯に]
(NHKためしてガッテン 2008年11月05日放送)
「むし歯のおさらい」
つづいては、むし歯に関する疑問です。 前回の放送では、次のようにお伝えしました。
ある人の前歯のひときわ白くなっている部分・・・実はこの部分は「隠れむし歯」です。 ライトをあてて光らせてみると、この部分は黒ずんでいました。 中をCTスキャンで調べると、小さな穴が空いてスカスカでした。 この隠れむし歯が大きくなると、ホントのむし歯になるのです。
そこで実験してみました。 人工的に作った隠れむし歯がある歯を、黙々と作業する人たちに1日4時間以上、 なめてもらいました。 2週間後に、なめる前と比べてみると、スカスカになっていた歯がかなり回復しました。
だ液にはカルシウムが含まれていて、隠れむし歯を治すことができるのです。 穴が大きく空いてしまったむし歯は、だ液では治せません。 しかし、隠れむし歯(初期むし歯)の段階であれば、だ液が毎日治してくれているのです。
食事をすると、むし歯菌が食べかすを分解して酸を出すので、食後30分程度は歯が 溶けやすくなります。 しかし30分程たつと、酸も弱まってだ液が歯を治す時間が始まるのです。 このように、お口の中では「溶かすと治すのつなひき」がいつも行われています。
たっぷり食事するのも、お菓子1個食べるのも、歯に与える影響はほとんど同じです。 間食の回数が多かったりすると、歯を治す時間が減っていってしまうので、 どうせ間食するならダラダラ食べずにまとめて食べることをおススメします。
そして一番気をつける必要があるのが、歯をみがいた後の「寝る前」です。 寝ている間は、だ液の量が減ってしまいます。 このため、夜、歯みがきをしたあとにビールやジュースなどを飲むと、歯が溶けて しまってむし歯になりやすいのです。
「まさかこれが歯を溶かす原因?」
50代の女性から次のようなお手紙をいただきました。 「寝る前は、お茶やミルクもダメなのでしょうか? 糖分が含まれていなければ 大丈夫だと思っていたのですが・・・・・」。
Aさんのむし歯のケースを紹介します。 Aさんの奥歯には、穴がいくつも空いていました。 むし歯ができた経緯を聞いてみました。 「去年の春に、血圧のために、奥さんが飲んでいたある健康飲料を毎日飲み始めました。 1年あまり飲んで体調も気分も上々と思っていましたが、歯ぐきの調子が悪くて 歯医者に行ったら、むし歯が見つかりました。なんと先生は、その原因は毎日飲んでいた 健康飲料らしいというのです」。
その先生は、そのむし歯を「酸蝕歯(さんしょくし)」だと言いました。 むし歯や歯周病の原因は細菌ですが、酸蝕歯に関しては、細菌が関与しないという特徴が あります。 ※酸蝕歯は、「酸蝕症(さんしょくしょう)」とも言います。
Aさんが飲んでいた健康飲料の原材料に含まれていた、はちみつの糖分、りんご果汁、 レモン果汁も原因のひとつであると先生は言います。 さらに、Aさんが体にいいと思って飲んでいた酢にも原因があるというのです。
そこで実験です。 酢をウシの歯の表面に垂らして観察しました。 すると1時間後には、歯の表面のエナメル質が溶けて内部の組織が見えていました。 表面がうっすら溶けていったのです。
「市販の飲み物のpHは?」 市販されている110種類の飲み物の酸性度(pH)を調べたところ、 栄養ドリンクは2.5、 スポーツドリンクは3.8、 ビールは4.6、 ワインは3.3。 なんと、今回調べた飲み物のほとんどが酸性だったのです。 ※すべての市販飲料を調べたわけではありませんので、酸性でない健康飲料もあると 思われます。
「むし歯にならないためには、市販飲料は飲まないほうがいい」ということではありません。 今回の番組でお伝えしたのは、「夜歯みがきしたあとには、酸性の飲み物や糖分を含む 飲み物は飲まないほうがいい」ということです。 昼間、ときどき飲むぶんには、まったく心配いりません。 私たちのだ液が酸を中和して元に戻してくれます。 ただし、昼間飲んでいる場合でも、ダラダラと飲み続ける場合は、「酸が歯を溶かす時間」が 「歯を治す時間」を上回って、むし歯になりやすいので注意が必要です。 また、健康のため毎日習慣的に飲む人の場合は、できるだけ食事と一緒に飲むようにすると、 だ液がたくさん出るので安心です。 そのような場合は、飲んだあとは、歯みがき! できない場合は、せめてうがいをしてください。 うがいをすると、酸蝕歯に関してはある程度予防できると考えられています。
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