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[歯周病菌 全身に影響?]
<「口の中だけ」と思ったら大間違い>

(読売新聞 2001年11月26日)


歯を支える組織(歯肉)に炎症を起こす歯周病は、歯周病菌が引き起こす感染症だ。
この病原体を私たちは軽く考えがちだが、歯だけでなく、さまざまな全身の病気と
関連している可能性が最近の研究で浮かび上がってきた。


東京都内の総合病院で昨年夏、20代のA子さんが3人目の子を出産した。
妊娠8か月半での誕生で、上の子たちも早産だった。
念のために、本人の承諾を得て破水の際に羊水を採取。
調べてみると「フゾバクテリウム・ヌクレアチム」という細菌が見つかった。
この細菌は通常、歯垢に住んでいる。
なぜ羊水にいるのか。
A子さんはこの間、歯周病にかかっていた。
調査した鴨井久一教授は、「羊水の菌が歯垢でも見つかった。
菌が早産の引き金になった可能性はある。」とみる。
歯周病菌と出産。
一見無関係に見える両者を結びつけるこんな仮説もある。
歯周組織で繁殖した歯周病菌は、やがて血液で運ばれて羊水の中に入る。
免疫細胞が菌を攻撃するが、その際、さまざまな生理活性物質が放出される。
それら物質の中には子宮内で羊水とともに胎児を包んでいる膜(羊膜)を
傷つけるものもあり、最終的に早産につながるという考えだ。
また、そうした活性物質の一種、プロスタグランジンE2(PGE2)などは
子宮の収縮を促進するよう働き、それが陣痛を早めるとの説もある。
米ノースカロライナ大学チームの研究では、歯周病のない妊娠の早産は6%だが、
歯周病があって妊娠中に悪化した妊婦では43%まで跳ね上がった。


歯周病の関与が疑われる病気はほかにもある。
心筋梗塞や動脈瘤などでは、病巣から歯周病菌の中で最も一般的な
ポルフィロモナス・ジンジバリスが実際に検出されたという報告がある。
米バッファロー大学チームは、CRPという炎症に関連するたんぱく質に着目。
重度の歯周病患者の4割近くで、このたんぱく質が大量に検出された。
歯周病菌が体内で持統的に炎症を起こしている証明だ。
CRPは最近、心筋梗塞のマーカーとして活用され始めた。
CRPが高い値だと、心臓病の危険も高まると考えられる。


糖尿病との関連も注目される。
糖尿病が歯周病の危険を高めることは知られているが、その逆の可能性も
指摘されるようになった。
歯周病を治療すると糖尿病も改善するとの報告があるためだ。
このメカニズムにも、先述の生理活性物質が関与しているとみられる。
活性物質が血中の糖を筋肉や肝臓などの細胞に運ぶホルモン(インスリン)の
働きを弱めるという説と、活性物質が膵臓のインスリン産生細胞を傷つけるという
説が考えられている。


さらに、がんとの関連までも疑わせる事例が最近報告された。
国立がんセンターの調査で、食道がんの細胞からトレポネーマ・デンティコーラという
歯周病菌が高い割合で検出されたのだ。
食堂がんの細胞には複数の細菌がいるとみられていたが、研究チームが患者20人の
がん細胞を採取し、菌種を特定するためDNAを増幅して約2,000検体を
分析したところ、トレポネーマ・デンティコーラが32%を占めた。
トレポネーマと食道がんとの関連については今のところ不明だが、同センター研究所
分子腫瘍学部の佐々木博巳室長によれば、口腔から食道粘膜に下りてきた
トレポネーマによって炎症が起き、それが持続すると、正常細胞のDNAが傷んで、
最終的に発がんに結びつくという可能性が考えられるという。


一方、今年になって米国立衛生研究所のチームはポルフィロモナス・ジンジバリスの
全遺伝情報を解析した。
歯周病の予防法の開発などに役立つと期待される。


国内でのこの分野の研究は遅れがちだ。
それだけに、一人ひとりの口腔ケアが重要になってくる。
「虫歯予防に比べて歯周病への関心は高いとはいえない」と、国立感染症研究所の
花田信弘・口腔科学部長は指摘。
「たかが歯周病という意識は捨て、国民全体の課題として受け止めなければならない」
と話した。



 

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<関連項目>
  ・「妊娠中の歯肉出血が死産に関連
  ・睡眠時無呼吸症候群が原因で心筋梗塞
  ・「口腔内の衛生改善で心疾患を撃退
  ・「歯周病は糖尿病や心疾患にも影響
  ・「歯周病から心筋梗塞に
  ・心臓をいたわる(4) 「
歯周病菌でも心疾患に
  ・「
歯肉炎と心疾患に遺伝的な関連性
  ・「歯周病の治療で血管機能が改善
  ・動脈硬化症の新治療法:血管炎症抑える抗体で」

  ・「
歯周病を防いでメタボも予防
  ・「ガンもメタボも炎症だった!」 世界一受けたい授業
  ・
心臓病・糖尿病・がんの原因は「慢性炎症」だった!

  ・「リハビリが人生を面白くする」<NHKプロフェッショナル仕事の流儀  作業療法士 藤原茂>


<糖尿病と栄養医学>
  ・「糖尿病とマグネシウムの意外な関係

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