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[哺乳と人口](JRD2001年2月号 Vol. 47, No. 1)東京大学名誉教授 高橋 迪雄 先生(現:味の素株式会社 栄養健康科学研究班)「哺乳類の生殖戦略−ヒトの視点から俯瞰する−」http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsar/jrd/jpage/vol47/470102.html より抜粋引用<哺乳と人口>哺乳動物では、哺乳の間に母親が示す行動発現を介して、子には敵味方の区別、採食可能な食物、社会的オリエンテーションなどが「刷り込まれる」と考えられる。これは、遺伝子に書き込まれていない情報が、中枢神経系の回路形成というかたちで母から子へ継承されることを意味しており、哺乳類の環境適応に大きな役割を果たしている。したがって、それぞれの動物種には固有の哺乳期間が存在すると考えられる。固有の哺乳を保証するためには、哺乳中に次の妊娠を起こらなくすることが必要で、実際全ての動物で、吸乳刺激が中枢神経に作用して排卵に必要なホルモンの分泌を抑制する仕組みが備わっている。つまり、先に生まれた子が育って、母親が次の子の哺育に専念できる頃を見計らって離乳が行われ、排卵とそれに引き続いて次の妊娠が始まるのである。この哺乳の方式が、生物としてのヒトと、われわれ文明人との間では大変違っているのではないかと考えられている。現在「生物としてのヒト」がいるわけではないが、人間に極めて近いチンパンジー、ゴリラの分娩間隔は4〜5年で、カラハリ砂漠でいまも狩猟採取生活をしている、クン族のそれも4年であるという調査結果がある。われわれは1年間隔で子供を持つことも決して珍しくないから、この違いには何らかの理由があるはずである。ヒトの分娩間隔が4年ということは、これから妊娠期間を引いた3年強が、ヒトの生理的な哺乳期間であることを意味している。さらに、ヒトの生理的哺乳は、昼夜を分かたず1時間に3回程度極めて頻回に行われていたらしい。このような頻度で哺乳が行われていれば、排卵の抑制は完全で、女性は10〜15年掛けて2〜3人の子を生むことで一生を終えていた。新生児期の損耗を考えれば、ヒトはチンパンジー、ゴリラと同様に数の増えない動物であった。人類400万年の歴史の殆ど全ての期間を通じて、人口の倍増には10万年を要していたという計算がある。現代、これが50年を切って、激しい人口増加が起きているのは、ヒトが生理的な哺乳の方式を放棄したからである。約1万年前に、それまでの狩猟・採取による移動生活から、農耕・牧畜などによる定住生活が始まり、母親の社会的役割が大きく変化した。狩猟・採取生活では、母親の育児の負担は極めて大きく、母親と子は常時一緒にいて、短い間隔で哺乳していたに相違ない。定住生活が成立すると、家の中にしばらく乳児を置いて、その間に母親が積極的に農業労働に従事することなどが可能になり、排卵を抑えるのに十分な哺乳の頻度が保てなくなっていったのであろう。その結果、たとえ哺乳中でも妊娠・出産が起きることから、必然的に1人の子供に対する授乳期間が短縮していった。これが文明人の哺乳の方式である。「文明の発祥」以後、他の類人猿などとは異なり、食糧の供給が満たされれば、それに応じて人口が増加する動物に変わってしまったのが今日の人口問題のルーツと考えられる。詳細は、http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsar/jrd/jpage/vol47/470102.html
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