汗っかきは3歳までに決まる?

[「汗っかき」は3歳までに決まる?子どもの汗、3つの秘密]

(ウェザーニュース  2019年8月3日)

<子どもの汗、3つの秘密>
夏の子どもといえば、汗びっしょりのイメージはないでしょうか。

ところが、「小さな子どもが実際に汗をかけているかというと、そうとは
限りません」と、長崎大学大学院の室田浩之教授(医歯薬学総合研究科
皮膚病態学)は言います。

知っているようで知らない子どもの汗の3つの秘密について教えていただき
ました。

(1)赤ちゃんと大人で体表の汗腺の数は同じ
汗をかく能力は、年齢によって刻々と変わるといいます。
例えば、赤ちゃんは大人とはずいぶん違います。

「人は、200万~500万個の汗腺をもって生まれますが、増えることはなく、
この数は生涯変わりません。その汗腺すべてに汗を出す能力があるわけでは
ありません。生まれて間もない頃は、汗を出す能力が未熟で汗をかけません。
暑い環境にさらされたり、体を動かしたり、泣くなど情動的刺激によって、
汗腺は徐々に汗をかく能力を獲得します。2歳半~3歳くらいまでに
一定程度の汗腺が能動化され、この割合は生涯変わらないと言われています」
(室田先生)

(2)小さな子どもだから「汗っかき」というわけではない
その後も、汗腺の能力は変化します。

「小学校高学年や中学生になる頃には汗をかく能力がさらに発達し、その
ピークは12歳頃ともいわれています。12歳ぐらいの子どもの手のひらや
足の裏は、大人の2倍くらいの汗をかいているようです。その後、余剰な
発汗能力は淘汰され、大人の発汗量に落ち着くのです。そして40歳を超えた
頃から、発汗能力に衰えが生じてきます」(室田先生)

なぜ私たちは乳幼児などの「小さな子どもは汗っかき」と感じるので
しょうか? 

「子どもと大人では汗腺の数は変わらなくても、体表面積が大きく違います。
つまり、子どもは汗腺の密度が高いのです。幼い子どもほど密集している
汗腺から汗が出るので、汗っかきに見えますが、汗腺から排泄される量は
そう多くありません。幼い子どもの発汗機能は未熟なため、体温調節には
皮膚の放熱も関わります。子どもは夏の炎暑下での活動や運動した後真っ赤に
なりますね。血管を広げて、皮膚をラジエーターのように使って冷却している
わけです」(室田先生)

(3)発汗能力は住む地域や気候で変わる
汗には、皮膚の上で蒸発する気化熱で体温を下げたり、病原体から体を
守ったり、皮膚を潤す機能があります。

「小さな子どもは汗をかく能力が低いので、熱中症になりやすく、暑さへの
対策が必要です。しかし、エアコン環境下で長時間過ごすことにも注意が
必要です。汗腺の発達度合いは、住む地域や気候の影響を受ける可能性が
あります。冬は冬、夏は夏らしい、季節を感じられる生活は理想的ですね。
例えば夏に向かって気温の上昇に慣れ、体を汗のかける状態にしておくことで
熱中症の予防にも貢献できるでしょう。真夏日などは室温のエアコン管理が
必要です。その際極端に低い温度設定を避け、時には少し汗ばむ程度の温度に
設定するなど、適度な調整ができるといいですね」(室田先生)

<夏の汗で注意したいこととは?>
最後に、大量にかいた汗を放置するのはよくないといいます。

「あせもなどの原因になります。また汗には角質を柔らかくする作用がある
ため、脇の下や鼠蹊部など、汗でふやけやすい部位では皮膚がこすれて
角質が除去されてしまい、赤くなったり痒くなる間擦疹を生じる危険性が
高くなります。発汗直後の汗には抗菌作用がありますが、時間とともに
汗のメリットは損なわれ、真菌・細菌などが繁殖しやすくなるおそれが
あります」(室田先生)

暑い夏がやってきました。
汗に対する正しい知識を持って、上手につきあいたいものです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190803-00009901-weather-soci

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