運動不足は糖尿病より危険 積極的に運動を

[運動不足は糖尿病より危険 積極的に運動を]

(家庭の医学  2019年7月12日)

<高齢者でも無理のない運動を>
運動不足の現代人に警鐘を鳴らす研究結果が発表されました。
それによると、運動不足は、糖尿病や心血管疾患、喫煙などを上回る健康上の
危険因子だといいます。
同時に、高齢者や高血圧のある人では特に、運動によって寿命が延びることも
示されました。

寿命を縮める危険因子といえば、喫煙、高血圧、高血糖、高脂血症や肥満が
主に挙げられます。

2018年に米国のクリーブランドクリニックの研究チームは、患者12万2007人
(平均年齢53.4歳の男女)を対象に1991~2014年に実施した大規模な
調査で、病気による死亡率と運動による心肺機能の健康さとの関連を検討
しました。

調査では、さまざまな病気をもつ患者にランニングマシンで有酸素運動を
行ってもらい、その成績と運動習慣の有無などの情報をもとに、運動強度の
低い人から、ずば抜けて高い人までを5つのグループに分類して、その後を
追跡しました。

年齢、性別、BMI、病気と治療状況などを考慮・調整をして導き出された
結果は、「運動不足は、心血管疾患、糖尿病、喫煙を上回る危険因子になる」
ということでした。
つまり、喫煙習慣がなく、心血管疾患や糖尿病などの生活習慣病がなくても、
運動不足の人はそれだけで、死亡リスクが高まるということです。

また、「運動強度が高いほど死亡リスクは低くなる」ということもわかり
ました。
特に70歳以上の高齢者では、「運動強度がずば抜けて高い人」は「運動強度が
高い人」より全死因の死亡リスクが約30%低い結果になりました。
高血圧の人の場合も死亡リスクが低くなったということです。

同クリニックの専門医は「高血圧や糖尿病の高齢者でも、有酸素運動の効果を
得られる」としています。
さらに「なるべく運動強度を高く設定すること」を勧めています。

確かに、慢性疾患を理由に運動を制限していると、特に高齢者では筋力と
筋肉量が減少するサルコペニアの状態に陥り、転倒や病気を合併するリスクも
高まることから、医師の指導のもと、積極的に運動をすることは大事だと
いえそうです。

では、どんな運動をどのくらいすれば寿命の延伸に役立つでしょうか。
前出の実験によれば、強度は高いほうがよいという結果でしたが、今まで
運動習慣のなかった人が、いきなり激しい運動をすれば、心臓発作や
けが・故障の原因になるので注意が必要です。

厚生労働省では、「運動+生活活動(歩行、掃除など)=身体活動」として
「健康づくりのための身体活動基準2013」を発表しています。
これによると、65歳未満の成人の場合、普通の歩行や家の掃除など以上の
強度の運動または生活活動を1日1時間、このうち汗をかく程度の運動を
週に1時間、65歳以上の高齢者の場合、強度を問わず1日40分が目安です。

米国保健福祉省(HHS)の運動ガイドライン(2018年)では、成人の場合、
中強度の運動を週に150~300分以上、または高強度の有酸素運動を
75~150分以上、あるいは、これらと同等量の両方の運動の組み合わせを
目安としています。
さらに、筋トレなど筋肉を強くする運動を週2回以上プラスすることも勧めて
います。

習慣的な運動が大切です。
スポーツジムやスクールを利用できなくても、たとえば速足のウォーキングと
スクワットの組み合わせなどから続けてみてはいかがでしょうか。

(監修:目黒西口クリニック院長 南雲久美子)

https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/126150/

No tags for this post.
カテゴリー: せ整形外科, せ生理学,  予防アンチエイジング パーマリンク