眠れないシニア 睡眠薬に警鐘

[眠れないシニア 睡眠薬に警鐘]

(時事通信  2019年6月28日)

<7時間眠れなくてもOK =70歳以上の高齢者>
年齢を重ねるにつれて体力は低下し、昼間でも疲労や眠気を感じることが
増える。
このため昼寝をしたり、夜は早めに床に入ったりする高齢者も少なくない
だろう。
しかし、なかなか寝付けない。
深夜や早朝に目覚めてしまう。
こんな睡眠の問題を訴え、睡眠薬を処方されるケースは決して珍しくない。

人間は加齢とともに、必要な睡眠時間が減少する。
70歳以上になると1日7時間以上の睡眠は生理学的に難しくなることは、
あまり知られていない。

横浜市内で開催された日本抗加齢学会総会で、睡眠の専門医は「若い世代の
睡眠不足が慢性化している一方、逆にシニア世代は必要以上に眠ろうとして、
睡眠薬に頼る人も少なくない」と警鐘を鳴らした。

<必要以上の睡眠、習慣に>
「若い人や働き盛りの世代は最低でも7時間の睡眠が必要で、調査によると
1時間から1時間半不足している。逆に70歳以上では、1日7時間以上の
睡眠を習慣にしている人は43%で、50代の16%を大幅に上回っている」
慶応大学特任教授(精神・神経科)を務め、東京都内や札幌市の睡眠専門の
クリニックで長年、不眠症の診療に携わっている遠藤拓郎医師は同総会の
セミナーでこう強調した。

「睡眠前にメラトニンなどのホルモンが分泌されて体温が下がり、入眠の
態勢が整う。逆に目が覚める数時間前には、コルチゾールなどのホルモンが
分泌されて体温が上がり、一定の体温に達すると目が覚める」

遠藤医師は「入眠」と「覚醒」のメカニズムを説明するとともに、
「このようなメカニズムが自然な睡眠をもたらす」と話した。
その上で「このメカニズムでは、20代までは8時間の睡眠が取ることが
できる一方、70代では6時間の睡眠しか取れない」と指摘した。

<睡眠薬、過剰処方の恐れ>
それにもかかわらず、70代以上の多くの人が「疲れた」などといった理由
で8時間以上床に入っている、との調査もある。
必要な睡眠時間以上に眠ろうとすることから、「床に入ってからなかなか
眠れない」(入眠障害)、「夜中に目が覚め、それからなかなか寝付けない」
(中途覚醒)、「朝早く目が覚めてしまう」(早朝覚醒)などの問題を訴える
シニア世代が増える、と遠藤医師は分析する。

「このような高齢者に睡眠導入薬を処方すると、過剰処方の温床になる。
問診で生活リズムを確認した上で、床に入る時間を遅めに指導するなどの
対応が有効だ」とアドバイスしている。

<若い世代は睡眠不足>
一方、70歳未満の世代は逆に睡眠時間の短さが問題になる。
60代までの理想的な睡眠時間は7時間とされている。
しかし、日本における多くの調査によると、実際の睡眠時間は男性が6時間、
女性が6時間半で、30分から1時間程度不足していた。

遠藤医師は「睡眠時間の短さは、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠の比率を
低下させ、睡眠の質を悪くしてしまう」と懸念する。

そこで、遠藤医師は「仕事やゲームなどでストレスや刺激にさらされている
間は、コルチゾールの分泌が続いてしまう。そのまま床に就いても体温が
下がらず、なかなか眠りに入れないし、眠りの質も悪くなる。ベッドに
入る前には、入浴やストレッチなど自身がリラックスできる習慣を組み込み、
少し長めの睡眠をとるように心掛けてほしい」と呼び掛けている。

(喜多壮太郎・鈴木豊)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190628-00010002-jij-sctch

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