[高齢者らの手脚の震え 群馬大大学院研究グループが原因解明
就労一助へ「根本的な治療」目指す]
(上毛新聞 2019年6月12日)
高齢者らの手脚が無意識に震える症状について、群馬大大学院医学系研究科の
定方哲史准教授と細井延武講師の研究グループは11日までに、世界で初めて
原因を解明したと発表した。
小脳から運動に関する電気信号を送る神経細胞の突起部分で、タンパク質の
一種が失われることが原因とした。
無意識の震えは、65歳以上の7人に1人に見られる症状。
震えを抑えられれば、高齢者らの就労継続などの一助になるとして、根本的な
治療法の開発を進める。
<アルコール依存症や緊張時の震えも解明目指す>
老化に伴い顕著になりがちな震えの症状「本態性振戦」を研究した。
グループによると、65歳以上の14%に症状が見られ、高齢者が働き続ける
上で、職種によっては大きな障害になっている。
研究では、細胞内でタンパク質の輸送に関わる「クラス2 アーフタンパク質」
を作れないマウスを用意して観察。
このマウスは起きている時だけ常に首や前脚が強く震えた。
詳しく調べたところ、小脳から神経細胞が送り出す電気信号が弱まっている
という異常を確認した。
電気信号が弱まったのは、神経細胞から次の神経細胞に伸びて信号を伝える
突起の付け根部分で、細胞外からナトリウムイオンを取り込むタンパク質の
一つ「Nav(ナブ)1.6」が失われていたことが原因と判明。
このため、Nav1.6の欠損によってナトリウムイオンを基にした信号が極端に
弱まり、運動の制御が困難になったと結論付けた。
これまで症状の治療は薬による対症療法だったという。
定方准教授は「老化でNav1.6が失われているとも考えられる。根本的な
治療法の開発も試みたい」とする。
アルコール依存症や体が緊張した状態でも同様の震えがあり、今後、仕組みの
解明を目指す。
研究成果は、12日に北米神経科学会誌「ジャーナル・オブ・ニューロ
サイエンス」のオンライン速報版に掲載される予定。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190612-00010000-jomo-l10
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