[赤ちゃんの発話、音声に加え顔情報も影響]
(あなたの健康百科 2019年04月26日)
乳児は生後2〜3カ月から「あー」「うー」といった発声を開始し、
「マンマ」「ママ」といった意味のある言葉を発するのは10〜12カ月後
からとされる。
過去の研究で、こうした言語の獲得には、周囲の人が発する音声をまねる
「音声模倣」が重要な役割を果たすことが明らかとなっているが、具体的な
過程についてはよく分かっていなかった。
今回、京都大学大学院教育学研究科教授の明和政子氏らの研究チームが発表
した報告によると、話し手の口元を見る傾向が強い乳児ほど、高い頻度で
音声模倣を行うことが分かったという。
(Developmental Science 2019; e12825)
<乳児とのアイコンタクトが重要>
研究チームはまず、「あ」「う」といった母音を発する発し手の顔を
(1)通常の顔情報(正立条件)
(2)上下180°回転(倒立条件)
の2パターンに分けてモニターに表示し、それを聞いた生後6カ月の乳児
46人における視線反応と音声模倣の頻度を記録した。
その結果、倒立条件と比べ正立条件の発し手に対して、乳児はより頻繁に
音声模倣を行った。
さらに、正立条件の発し手に対する乳児の視線反応をより詳しく分析した
ところ、話し手の目よりも口唇部を長く注視した乳児ほど、音声模倣の頻度が
高かった。
次に研究チームは、話し手を
(1)相手を直視している顔情報(直視条件)②
(2)を逸らしている顔情報(逸視条件)
の2パターンに分けて、同じように乳児23人における音声模倣の頻度を
比較した。
その結果、逸視条件と比べて直視条件の話し手に対して、乳児はより頻繁に
音声模倣を行った。
さらに、直視条件と逸視条件のいずれにおいても、話し手の口元を長く
注視した乳児ほど音声模倣の頻度が高かったという。
こうした結果について、研究チームは「乳児は耳にした音をただ自動的に
口マネしているだけではなく、話し手の口の動きやアイコンタクトといった、
他者の顔情報からの影響を強く受けていることが示された」と結論。
今後について「より複雑な語彙獲得の個人差と、どう関連するかを解明する
ことが課題となる」と展望している。