脱線事故負傷者に「罪悪感」色濃く

[自分は助かった、遺族と話すと申し訳ない…
                  脱線事故負傷者に「罪悪感」色濃く]

(神戸新聞NEXT  2019年4月25日)

尼崎JR脱線事故から14年となるのを前に、兵庫県こころのケアセンター
(神戸市)が、負傷者20人から心の傷や回復の経緯を聞き取る調査を行った。
これまで統計的な「量的調査」を実施してきたが、今回は、対象者の語りを
丁寧に分析する「質的調査」を初めて導入。
色濃く浮かび上がったのは、乗客106人が亡くなった中で生き残った
「罪悪感」だった。

同センターは事故後、負傷者に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状
などをアンケートし、数値化してまとめる調査を3回実施。
この「量的」な分析は、おおまかな特徴がつかめる一方で表面的な内容に
とどまる傾向があり、「質的」に調べることにした。

昨年9~11月、30~80代の男女20人に、1人ずつ約1時間半かけて自由に
話してもらった。
内容を文字に起こし、一つ一つのフレーズを細かく検討。
「事故直後の記憶」「家族の傷付き」「JR西日本との関係」など15ほどの
カテゴリーに分類したところ、「罪悪感」が色濃く出た。

調査に携わった鈴木逸子主任研究員によると、負傷の程度よりも、事故現場で
目の当たりにした光景の影響が強いという。
20人中16人に強い印象が残っており、「(治療の優先順位を決める)
トリアージで『救命不可能』の黒タグが付けられているのに動いている人が
いた」「亡くなった人がクッションになってくれたから助かった」などと
話した。

事故後の生活で心の傷が深まった人もいた。
「周囲に話しても『まだ事故のことを考えているのか』という感じだった」
「遺族と話していると申し訳なくなる」などの声が寄せられた。

回復のきっかけについては家族の支えや、負傷者同士で思いを打ち明け合った
ことを挙げる人がいた。
体験を文章につづったり、事故の再発防止の活動に携わったりして症状が
和らいだとの意見もあり、同センターは「自身の人生で、事故をどう
意味づけられるかが大切」とみる。

今回の対象の20人は現時点で、心的外傷(トラウマ)の症状が一部に見られた
ものの、PTSDと診断された人はいなかった。

鈴木研究員は「比較的日常を取り戻した人でも罪悪感が消えない事実が、
事故の重大さを表している」と話す。

一方で、調査の依頼に応じながら、聞き取り当日に「話す気分になれない」と
断った負傷者がいた。
加藤寛センター長は、今も体験を一人で抱え続け、思い悩む人が数多くいると
指摘。
「事故の被害者支援を当事者や医療機関のみに委ねるのは限界がある。行政
など公的な機関が、網羅的かつ長期的に支援する仕組みづくりが必要だ」と
訴える。
(小川 晶)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190425-00000000-kobenext-l28

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[関連項目]

・「サバイバーズ・ギルト

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