みかん・野菜ジュースで黄色くなる「柑皮症」

[こんなにも面白い医学の世界 みかん・野菜ジュースで黄色くなる?]

(レジデントノート  2019年2月号掲載)

子どもの頃、「みかんを食べ過ぎると黄色くなるよ」と親から注意され、
そんな馬鹿なことがあるかと思っていましたが、実際に掌が黄色くなって
驚いた覚えがあります。
これは柑皮症と呼ばれ、文字通り柑橘類やカボチャ,ニンジンなどに多く
含まれるβカロチンの血中濃度が上がったためにみられるものです。

一般的には血中βカロチン濃度が0.5mg/dLを超えると症状が出ると言われて
いて、βカロチンは代謝されてビタミンAになります。

岡山大学病院の高度救命センターには小児科医かつ救急医の小児集中治療を
専門とする先生が数人いますが、「黄疸があるから調べてくれ」と小児科
開業医の先生から紹介された経験を全員がもっています。
そのほとんどは、健康志向のあまり、親が野菜ジュースを大量に飲ませた
ことが原因です。

βカロチンは脂溶性なので脂質異常症で柑皮症が出やすいですし、肝障害や
甲状腺機能低下ではβカロチンの代謝が遅くなるため、これまた柑皮症が
みられやすくなります。

最近は、ダイエット目的での海苔の大量摂取の例も報告されています。
海苔もβカロチンを多く含みます。

柑皮症と高ビリルビン血症の区別は眼球の白目をみればわかります。
白目をみて黄染があれば高ビリルビン血症だと言えるのですが、これは
ビリルビンが眼球の強膜に多く含まれるエラスチンと親和性が高いためです。
βカロチンは強膜には結合しません。

ちなみに、白目があるのは霊長類ではヒトだけだそうです。
これは実は詳細な研究がなされていて、類人猿までは狩猟や身の安全のために
視線が相手にわかるとまずいので白目がなく、ヒトにまで進化すると視線で
コミュニケーションをとる必要がでてきたから白目が出てきたのだ、と説明
されています。
「目は口ほどにものを言う」とは昔から言いますが、白目に意味があることを
はじめて知りました。

(岡山大学医学部 救急医学  中尾篤典先生)

https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758116206.html

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