縦書きの文章を読むと縦に並んだ商品が欲しくなる

[縦書きの文章を読むと縦に並んだ商品が欲しくなる?]

(あなたの健康百科  2019年02月04日)

スーパーやコンビニエンスストアに行くと、新商品や特売品、売れ筋商品、
定番品などがさまざまに工夫を凝らして陳列され、売り場を賑わしている。
商品の陳列方法については、同じ商品や関連商品を棚の上から下まで縦に
並べる垂直陳列と横に並べる水平陳列があるが、どちらの方が消費者の
購買意欲を高めるのだろうか。

私たちがこうした縦や横に並べられた商品を選ぶ際に、普段慣れ親しんでいる
文章の書き順・読み順が影響しているかもしれないという驚きの研究結果を、
広島大学大学院総合科学研究科行動科学講座准教授の有賀敦紀氏が米国の
医学誌PLOS ONE(20018; 13: e0209837)に発表した。

<これまでは横に並べた方がよいと考えられていた>
これまで欧米などで行われた研究では、垂直方向よりも水平方向に並べられた
商品の方が消費者の購買意欲をそそること(「水平陳列の優越性」)が、
実験室やスーパーなどの現場調査で一貫して報告されていた。

これは、「人間の視野は垂直方向よりも水平方向に広いため、水平に並べ
られた商品の方が効率的に認知することができるため」と考えられ、民族や
文化による違いはなく、全ての人に当てはまる現象と考えられてきた。

しかし、商品を認知しやすくすることには視野の広さだけでなく、商品の
デザインや文字の大きさ・太さ、読みやすさ、商品や棚の明るさ、色使い
など、さまざまなことが影響すると考えられる。

そこで有賀氏は、「消費者が商品を選ぶ際に優位な陳列方向は、消費者の
読みの文化に依存する」という仮説を立て、検証するために実験を行った。

<水平陳列の優位性を否定>
有賀氏はまず、漢字と仮名を使う文化を持ち、縦読みと横読み両方の習慣が
ある日本人では、アルファベット文化圏(横読み)の欧米人に比べて、
水平陳列の優位性は弱まると推測した。

最初の実験では、日本人被験者に垂直または水平に配置した10種類のアイス
クリームの画像を2~15秒間見せて、「この中からアイスクリームを7個
買うとしたら、何種類を選びますか1~7で答えてください」と質問した。
その結果、垂直陳列を見た後と水平陳列を見た後で、選んだアイスクリームの
種類に差はなかった。

米・オハイオ州立大学のDengらの先行研究(10種類のチョコレートの画像を
使って同じような実験をした)では、水平陳列の優位性が示されていたが、
今回の結果から日本人では水平陳列の優位性がないことが明らかになった。

<垂直・水平陳列の優位性は、直前に読んだ文章に影響される>
有賀氏は次に、日本人では垂直・水平陳列の優位性は「直前の読みの経験
=縦書きまたは横書きの文章を読むこと」によって生じると推測。

今度は、まず被験者に縦書きまたは横書きで印刷された夏目漱石の文章を
黙読させてから、最初の実験と同様にアイスクリームの種類を選ばせた。

その結果、黙読の方向と一致しない陳列(縦書きの文章を読んだ後の水平陳列
/横書きの文章を読んだ後の垂直陳列)よりも一致した陳列(縦書きの文章を
読んだ後の垂直陳列/横書きの文章を読んだ後の水平陳列)の方が、被験者が
選んだアイスクリームの種類は多かった。

このことから、直前に読んだ文章の印字方向によって、商品を選ぶ際に
効果的な並べ方が決まることが分かった(図)。

<パッケージデザインや通販への応用も>
買い物をする際には、選択する商品の種類が多ければ多いほど、消費者の
購買量は「ついで買い」「ながら買い」などで結果的に増加することが
知られている。

有賀氏は「今後の課題は、実験結果が現実の売り場やネット通販でも生じる
のかを明らかにすることだ。例えば、商品のパッケージに印字された文字の
方向と陳列の関係を調べれば、効果的な陳列方法だけでなく、売り場を想定
した効果的なパッケージデザインを科学的に提案できるかもしれない」と
指摘し、さらに「テレビショッピングやネット通販などで商品を画面に表示
する際に、読みの文化や人種といった消費者の属性に合わせて表示方法
(垂直または水平)を変えることで、どれくらい購買意欲をかき立てるかに
ついても調べていきたい」と述べている。

この記事を読んでいるあなたも、知らず知らずのうちに水平陳列の商品に
ひかれてしまっているかも?

https://kenko100.jp/articles/190204004764/#gsc.tab=0

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