Dr. 倉原のおどろき医学論文:兄弟を47年間体内に宿し続けた男性

[兄弟を47年間体内に宿し続けた男性]

(ケアネット  2018年11月16日)


奇妙なタイトルですね。
自身の兄弟を、何と47年間も宿し続けたという男性がいるのです。

47歳の男性が、「私は生まれたころからおなかに腫瘍があるんだ、でも症状は
ないんだけど…」と病院へやってきました。
生まれたころからある腫瘍であれば、悪性腫瘍の可能性は低いでしょう。
主治医は、腹部の腫瘍の精査を始めました。
すると、腹部CT写真で、20cmほどの巨大な腫瘍が見つかりました。
お、大きい。
予想よりもはるかに大きい。

この男性は手術を受けました。
その20cmの腫瘍は良性腫瘍でも悪性腫瘍でもありませんでした。
それは、赤ちゃんでした。

へっ?
彼はおなかに妊娠していたのでしょうか?

いいえ、違います。
この20cmの赤ちゃんは、本来は彼と一緒に生まれてくるはずだった、双子の
片割れだったのです。
妊娠の間に何らかの異常があったのでしょう、赤ちゃんの1人はなぜか
もう1人の兄弟の体の中に入り込みました。
そして、おそらくどこかの時点で死亡したに違いありません。
死亡した赤ちゃんの体は、その男性の体の中に封じ込められることと
なりました。

このような病態を「胎児内胎児」と呼びます。
ショッキングなネーミングですが、1960年にLewisがこう名付けて以来、
世界中でこう呼ばれ続けている病名です。
本来であれば出生直後~1歳くらいには胎児内胎児に気付くため、通常摘出
されます。
しかし、世界にはこの男性のように何十年間も兄弟を体に宿し続けながら
生活していた人も存在します。

胎児内胎児の中には、複数の足があったり手があったり、わかりやすい例も
あります。

実際、足が3本生えてストリッパーとして活躍した女性も存在します。

多くはおなかの中に 胎児内胎児が入り込みますが、まれに頭の中に入って
いるという報告もあります(世界で20例も報告されていないそうです)。

胎児内胎児自身は当然ながら生存することはできないため、腫瘍と同じように
摘出することで治療されます。
無症状の場合、経過観察も1つの選択肢です。



http://www.carenet.com/report/series/internal/kurahara/cg002023_127.html




No tags for this post.
カテゴリー: せ生理学 パーマリンク