虫歯がないのに歯が痛む「非歯原性歯痛」

[虫歯がないのに歯が痛む「非歯原性歯痛」]

(あなたの健康百科  2018年10月31日)


歯の痛みの原因として多いのは、虫歯や歯周病をはじめとする歯科疾患だが、
歯以外が原因の痛みがあることをご存じだろうか。

歯が痛むにもかかわらず、歯には異常が見つからない場合に疑われるのが
「非歯原性歯痛」だ。

日本大学松戸歯学部口腔健康科学講座の小見山道教授は、日本私立歯科大学
協会が10月23日に東京都で開いたプレスセミナーで講演し、非歯原性歯痛の
原因や症状、治療法などについて解説した。



<原因はさまざま、特定して治療を>
歯が痛むのに、歯自体に原因がない非歯原性歯痛。
小見山教授によると、歯の痛みを訴えて歯科を受診した人の約3%が非歯原性
歯痛で、9%は歯自体に原因がある歯原性歯痛と非歯原性歯痛の混合だと
いわれる。
つまり、歯の痛みから歯科を訪れる人の数%は、この病気が疑われるという
ことになる。

非歯原性歯痛で歯を治療しても、痛み本来の原因を取り除くことには
ならない。
歯を削ったり、神経(歯髄)を取ったり、歯そのものを抜く抜歯などの不要な
治療が行われてしまうと、痛みが解消されないばかりか、治療が長引き、
患者に不満が残ることになる。


日本口腔顔面痛学会のガイドラインでは、非歯原性歯痛の原因は8つに分類
されている。
「原因で最も多いのは『筋・筋膜性歯痛』で、全体の6~7割を占めます」と
小見山教授は説明する。
これは、側頭筋や咬筋など、口の開閉やそしゃくを行う筋肉、首の筋肉の
痛みが原因で起こる関連痛だ。
痛みのある場所と、痛みの原因となっている場所とが一致しないものを
関連痛と呼ぶ。
痛みを生じやすいのは上下の奥歯。
そして、最も大きな特徴は、筋肉中に”トリガーポイント”(圧迫すると痛みを
感じる圧痛点)と呼ばれるしこりのようなものがあり、ここを指などで押すと
「うっ」とうめくような痛みが生じる点だ。
このトリガーポイントを5秒程度押し続けると、歯痛が発生する。

トリガーポイントは、顎を動かす筋肉を酷使したために生じるとされる。
そこで、筋肉のストレッチやマッサージなどの治療が行われる。
筋肉の血流を良くすることで、こりが解消され、症状が改善するという。
急性の場合は、消炎鎮痛剤を服用することもある。



<神経障害や頭痛が原因になることも>
神経回路の異常が原因で起こる「神経障害性歯痛」もある。
末梢から中枢に至る神経のどこかに障害が生じて感じる痛みだ。
主に、発作性の三叉神経痛(痛覚、温度覚、触覚などの顔の感覚を脳に伝える
神経が刺激されることによる痛み)と、持続性の神経痛の2つのタイプが
ある。


小見山教授は「三叉神経痛の場合、顔面の特定の場所に触れると、瞬間的に
電気が走り抜けるような(電撃様)激痛が発生するため、洗顔や歯磨き、
ひげ剃りができません。歯がツーンとしみるのも特徴です」と話す。
典型的な三叉神経痛は、加齢とともに血管が動脈硬化を起こし、神経を圧迫
することで起こる。
ただし、脳腫瘍や多発性硬化症等により発症することもあるため、それらの
疾患との鑑別が重要となる。
発症年齢は50歳以上に多い。
治療はカルバマゼピンなどを用いた薬物療法や、神経ブロック、神経外科的
手術などがある。


それ以外には、片頭痛などの症状の一つとして起こる「神経血管性歯痛」が
ある。
歯の治療をしても効果はなく、頭痛の専門家を受診し、頭痛の治療を行う
ことが必要になるという。


こうした慢性の歯の痛みに対処すべく、全国的に患者を診療できる拠点作りが
進んでいる。
日本大学松戸歯学部付属病院では、12年前に歯科と医科の医師が同じ
診察室で、口、顔、頭の痛みを治療する「口・顔・頭の痛み外来」をスタート
させた。
診療科の名称は異なるが、歯科と他の医科(歯科口腔外科、脳神経外科、
耳鼻咽喉科、麻酔科、精神科など)が連携し、原因不明の歯痛を診断、治療
できる施設は増えているという。
痛みがあるのに歯には異常がないと言われたら、大学病院の歯科口腔外科
などの専門の医師に問い合わせるべきかもしれない。



https://kenko100.jp/articles/181031004700/#gsc.tab=0




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