血流障害が招く大腿骨頭壊死症

[血流障害が招く大腿骨頭壊死症]

(家庭の医学  2018年10月2日)


<壊死が広範囲の場合は手術で治療>
骨の血流障害から壊死が進み、股関節の機能に支障をきたす大腿骨頭壊死症。
国内での発症は1年に2000~3000人とされ、30代以上の働き盛りの年代に
多くみられるといわれています。

大腿骨は骨盤から膝までの1本の大きな骨で、40~45cmの長さがあります。
大腿骨の骨盤側の先端は丸いボール状で、骨盤側のお椀のような形をした
臼蓋と呼ばれる部分に、すっぽりはまるような形になっています。
これが股関節で、骨頭の約5分の4が臼蓋に包み込まれ、関節を安定させて
います。

大腿骨頭壊死症は、名前のとおり大腿骨の頭(先端)が壊死してしまう病気
です。
大腿骨に限らず、骨にも血液が循環していますが、臼蓋に包まれた大腿骨頭は
血流が悪くなりやすい部位の1つ。
この部分に何らかの原因で血流障害が起こると、徐々に細胞や組織が死んで
しまうのです。

骨頭の細胞や組織が、壊死しただけでは痛みを感じません。
しかし、壊死した骨頭が弱くなるため、体重がかかることで股関節が壊されて
変形し、関節の周りに痛みがあらわれます。
腰痛や膝痛などが起こることも。
症状が進むと、変形は骨盤側の臼蓋にもおよび、さらに大腿骨と股関節が変形
すると、歩行困難を引き起こすこともあります。

大腿骨頭壊死症の中で、原因が明らかではないものは、特発性大腿骨頭
壊死症と呼ばれ、難病に指定されています。
アルコールの多量摂取、ステロイド(副腎皮質ホルモン)薬の服用が発症に
関与しているとされています。

もう1つは、骨折などの外傷や放射線治療等、原因が明らかな症候性大腿骨頭
壊死症があります。
大腿骨の骨頭は骨盤に近い位置にあるため、子宮がんなど骨盤内の悪性腫瘍に
対して放射線治療を行った後、その影響で骨頭の壊死が生じます。

診断では、骨折などの外傷歴やステロイド薬の使用、アルコールの多飲歴等を
問診で確認します。
あわせて、レントゲン、MRI、放射性医薬品を用いて撮影する骨シンチグラム
などの画像検査を行います。

治療には、保存的療法と手術療法の2つがあります。
骨頭の損傷の程度や、患者の年齢、生活環境などに合わせて選択されます。

壊死の範囲がせまく、痛みが少ない場合には、股関節に負担のかからない
生活を送る保存的療法を取り入れます。
痛みには消炎鎮痛薬を用いながら、安静を保ち、杖を使って股関節にかかる
体重を軽減する、椅子やベッド、洋式トイレを使う、ストレッチで股関節を
柔らかくして血行を促すなどを行います。

一方、壊死が広範囲におよんでいる場合や、保存的療法を6カ月ほど続けても
効果がみられないときは、骨切り術や人工関節置換術などの手術が検討され
ます。

骨切り術は、症状が軽度で壊死の範囲が限られている場合に行われます。
切除の方法によって、内反骨切り術や骨頭回転骨切り術など、いくつかの
方法があり、どの程度骨頭が残っているかによって決定します。
この手術では、関節面の接触部を傷んでいない部分に変えたり、接触面を
大きくして負担を軽減します。

さらに重症のときは、人工関節置換術が行われます。
骨頭部分だけを人工骨に換えるものと、股関節ごと人工股関節に置き換える
ものがあります。
近年は、人工関節の質や耐久性が向上してきており、感染症や術後の脱臼、
深部静脈血栓症など、合併症の発症リスクは低減しています。


(監修:あそうクリニック院長 麻生伸一)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125520/


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