声が出せない…けいれん性発声障害

[声が出せない…けいれん性発声障害]

(家庭の医学  2018年9月24日)


<生活にも支障が!>
私たちは、のどの奥にある2枚の声帯を振動させて声を出しています。
しかし、何らかの原因で声帯が動かず、声がつまったり、かすれたりする
ことがあります。
その原因のひとつに、脳の機能がうまく働かないことがあげられます。

声帯がうまく動かず、声が出しづらくなる状態を「発声障害」といいます。
のどや声帯にポリープなどの病気がみられる場合がありますが、とくに異常が
ないケースも少なくありません。

その原因はさまざまです。

「心因性発声障害」はストレスなどの精神的な要因によって起こります。

「過緊張性発声障害」では、舌やのどの筋肉が極度に緊張した状態になる
ことで声が出にくくなります。
緊張すると誰でもこのようなことがありますが、これが「定着」してしまった
のが「けいれん性発声障害」と考えてください。

結果的に脳の誤作動がふえて筋肉がうまく動かせなくなるのです。
「けいれん性発声障害」は、ジストニアという病気の一種と考えられて
います。
自分の意思とは関係なく、声帯周辺の筋肉が収縮するために、絞り出すような
声になったり、声がつまったりします。

比較的若い女性にみられ、アナウンサーやテレフォンオペレーターなど、
声をよく使う仕事をしている人に多いといわれます。
仕事が続けられなくなる上、周囲からも理解されにくく、精神的な負担を
抱えることも少なくないようです。

声帯自体に異常はないので病気として診断されにくく、そのため病院を転々と
している人も多いといいます。
また、心因性と診断されることもあり精神安定剤などを処方されるケースも
よくみられます。


このようなことから、類似疾患との鑑別を進めるため、新たに診断基準が
定められました。
けいれん性発声障害の診断は、以下の5点を基本に行われます。
 (1)のどや声帯など器官そのものに異常やまひがみられない。
 (2)呼吸や食べ物の飲み込みに支障がない。
 (3)身体的な病気や心因性の原因がない。
 (4)症状が6カ月以上続いている。
 (5)ジストニアを除く、神経や筋肉の病気がない。


病態は大きく2つに分けられます。
ひとつは、声を出そうとすると声帯が内側に強く閉じるため絞り出すような
苦しい声になる「内転型」。
もうひとつは、声帯が開いてしまうため息がもれてかすれ声になる「外転型」
です。
内転型が多くを占め、まれに両方の症状がみられる「混合型」もあります。


治療として一般的なのは、「ボツリヌス剤」を声帯に注射し、声帯筋を
まひさせる方法です。
保険で認められましたが、まだ対応施設が少ないのが実情です。
効果は2~3カ月ですが、定期的に治療を続けているとその期間は延び、
いずれ治療不要になることが多いようです。

そのほかに、甲状披裂筋摘出術と呼ばれる、声帯筋を摘出する方法が
あります。

また、最近注目されているのが、声帯が強く閉まりすぎないようチタン
ブリッジで固定させる方法です。
この方法も高度な技術が必要で、治療できる医療機関が限られているのが
現状です。
事前に調べておくとよいでしょう。


(監修:寺本神経内科クリニック院長 寺本純)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125495/


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