若手と女性医師、外科を敬遠 担い手不足が深刻化

[若手と女性医師、外科を敬遠 きつい勤務や訴訟リスク…
                         担い手不足が深刻化]

(西日本新聞  2018年9月3日)


手術室で華麗にメスをさばき、患者の命を救う-。
漫画「ブラック・ジャック」に象徴されるような外科医が花形だった時代も
今は昔。

きつい勤務や訴訟リスクから、若手医師が外科を敬遠する傾向が続いている。

高齢化が進み、がんなど外科手術が必要な患者の増加が予想される中、担い手
不足が深刻化している。


「針先を自分の方に向けないとうまくいかないよ」
8月31日夜、九州医療センター(福岡市)が若手医師を対象に開いた外科
技術を競うコンテスト。
ベテランの指導を受けながら、医師1、2年目の研修医ら若手11人が、縫合や
切開など外科医に求められる繊細な作業に挑戦した。

若手に外科への興味を持ってもらおうと、今回初めて企画。

自身も心臓外科医の森田茂樹院長は成績上位者に表彰状を渡し「ぜひ外科に
来て」と呼び掛けた。



<外科学会入会者は半減>
日本外科学会によると、医師全体の数は毎年増加しているのに外科学会
入会者は減少。
30年ほど前は入会者が2000人を超える年もあったが近年は800~900人台に
とどまっている。

3年目以降の若手医師が希望の診療科と研修場所を選ぶ「専門医養成制度」で
今年、外科を選んだ人数は
 ・福岡39人(定員127人)
 ・佐賀3人(同12人)
 ・長崎6人(同25人)
 ・熊本12人(同20人)
 ・大分8人(同11人)
 ・宮崎3人(同12人)
 ・鹿児島11人(同29人)
など、全都道府県で定員を大きく下回った。

学会内では「今は中堅・ベテランに支えられているが、10年、20年後に
外科医不足が深刻になる」との危機感が広がっている。

コンテストに参加した研修1年目の田中里佳さん(25)は「外科は格好よくて
やりがいがある一方で、大変だというイメージもある」。

病院に勤務する外科医は、緊急の患者に対応するための当直や呼び出しが
あり、他の診療科よりも長時間勤務になりがちだ。
患者の命を左右する手術の重圧にもさらされる。

福岡市のベテラン外科医は「かつては命を救いたいという単純な思いで外科を
目指す若手が多かった。毎晩病院に泊まり込んで1件でも多く手術を任せて
もらい、経験を積もうと必死だったが、働き方改革の風潮で今の若手は勤務
時間が終わると帰るし、無理強いもできない」と嘆く。


外科医が少ない傾向は、特に女性医師に顕著だ。
厚生労働省の調査によると、2016年末時点で全国の医師のうち女性の割合は
約21%だったが、外科に限ると約9%。
長時間労働と出産・子育ての両立の難しさが要因とみられる。

女性が外科など特定の診療科目を敬遠せざるを得ない現状が、東京医科大で
明るみに出た「男子優遇」問題の背景にあるとも指摘される。


コンテストを企画した九州医療センターの竹尾貞徳統括診療部長は「外科医が
減れば一人一人の負担が増え、労働環境がさらに過酷になる悪循環に陥って
しまう。昔のように根性論で教育するのではなく、子育て支援など若手が
働きやすい環境づくりを進める必要がある」と話している。



https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180903-00010000-nishinpc-soci




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