味覚も老化する

[味覚も老化する!?]

(家庭の医学  2018年8月20日)


<塩分過剰に注意>
年齢を重ねると、さまざまな機能が低下してきますが、味覚も例外では
ありません。
味覚が衰えると、どんな不都合が生じるのでしょうか? 


味覚は舌や口腔・咽頭の表面にある味蕾という感覚器官で感知しています。
味蕾は生直後が最も多く1万個以上あると考えられ、成人するころには
約7000~8000個に減少します。
その後、加齢とともに減り続け、80歳になると約4000個にまで減ってしまい
ます。

味覚には、塩味、甘味、酸味、苦味、うま味の5つの基本味があります。

だいたい60~70歳くらいから全般的に味覚が鈍くなり、特に著しく塩味に
対して起こります。
塩味の次に鈍くなるのは甘味や酸味で、苦味はあまり大きな変化がない
ようです。


塩味に対する感覚が鈍るため、高齢者には塩辛い味付けでちょうどよく感じる
ようになります。
若い人が同じものを食べると塩辛く感じます。
反対に、若い人が作った料理は、高齢者には薄く感じられることが多い
ようです。

しかし、塩分の摂り過ぎは、高血圧などさまざまな病気の原因になり、健康に
とってはよくありません。
また、塩辛いものを食べると、水分をたくさん摂るようになるため、腎臓にも
負担がかかり、トイレに行く回数も増えてしまいます。

自分が作った料理を「塩辛い」と指摘されたら、味覚が衰えてきたのかも
しれません。

また、年齢とともに味覚が衰えると知っておけば、むやみに厳しい指摘を
しないなど、味付けをめぐる家族間のトラブルを避けることができるで
しょう。

料理の味が薄いと感じるようになったとき、おいしく食べるためには、調理の
際にひと工夫しましょう。
例えば、焼き魚は仕上げにレモン汁などで酸味をプラス。
塩味が薄くてもおいしくいただくことができます。

だしの旨みや、麹のコクなどをプラスするのもいいでしょう。

塩はサラサラした食卓塩よりも、ミネラル豊富な岩塩などの自然塩を使った
ほうが、風味が豊かになり、使い過ぎを防げます。


甘味への感覚も鈍るため、甘いものも食べ過ぎにもつながり、肥満、脂肪肝、
糖尿病のリスクが高まります。
精製された白砂糖よりも、黒砂糖やきび砂糖を使うと、味に深みが出て、
少量でも満足できるようです。


若い人でも亜鉛が不足すると、味蕾の働きが鈍くなって味覚障害に陥ります。
日頃から不足しないように心がけようにしましょう。
亜鉛を豊富に含む食材は、牡蠣、かつお、さば、いわし、豚肉、牛肉、
ココア、パルメザンチーズ、カシューナッツ、ほうれん草などです。


また、唾液の分泌が減少した場合も、味覚を感じにくくなります。
特に更年期以降の女性はドライマウス(口腔乾燥症)になりやすいので
要注意です。
よく噛んで食べたり、ストレスを減らしリラックスしたりすることも、
ドライマウスの予防になります。


さらに、舌の表面に舌苔(ぜったい)がたまることも、味覚を感じにくく
させます。
舌の表面に白い汚れなどがたまっていたら、舌を動かす運動が少ないこと
(会話が少ない、食事の際によく噛んでいないなど)や、胃腸障害など
内臓疾患の疑いがあります。
原因を究明し、その疾患に対処しましょう。

専用の舌ブラシでの掃除は、舌の中央部分にのみ使用し軽くこする程度で
手入れをしましょう(舌前方や舌辺縁は、味蕾が豊富に存在しますので、
使用は避けること)。
舌ブラシは、舌の味蕾のある乳頭などを傷つけることもあり、過度に使用
するのは避けてください。


口の中を清潔に保つことが、味覚の衰えをも防ぎます。
心配な場合は、耳鼻咽喉科や歯科、口腔外科などに相談してください。


(監修:はくらく耳鼻咽喉科・アレルギー科クリニック院長 生井明浩)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125410/





No tags for this post.
カテゴリー: え栄養医学, ドライマウス口腔乾燥症, み味覚/味覚障害/風味障害, よ予防歯科 パーマリンク