院内ポリス・・・事件は病院で起きている!

[事件は病院で起きている! 「院内ポリス」のタフな仕事ぶり]

(NEWSポストセブン  2018年8月1日)


深夜12時すぎ、自室のベッドに入ろうとしていると、枕元に置いてあった
PHSが鳴った。
「入院患者さんが暴れて、誰も止められなくて……」
夜勤の看護師の動転した声から現場が切迫していることを察した男は、
「すぐに向かうので、決して無理はしないでください」と告げ、病院に
急行した。

夜間通用口で待っていた看護師に案内されて病室に入ると、男性入院患者が
酒瓶を手に意味不明の言葉をわめき散らし、その傍らで当直の医師が
「ウウッ」とうめき声を上げてうずくまっている。
男性患者に暴行を受けたようだ。

駆けつけた男に対しても「なんだお前は!」と声をあげる患者。
すると男は「まあ、まあ。落ち着いてください」といいながら患者に近づき、
「これはひとまず置いておきましょうね」と、酒瓶を持っている手を掴んだ。
その腕力と、静かな口調ながらも滲み出る“凄み”に臆したのか、患者は
シュンと大人しくなった。

この“男”の働きによって、真夜中の病院は平穏を取り戻した──。

医師や看護師に対する暴力や患者同士の喧嘩、さらには窃盗、セクハラなど、
病院内ではさまざまなトラブルが発生する。


わずか3か月の間に入院患者48人が相次いで死亡し、看護師がそのうち2人に
対する殺人容疑で逮捕された旧大口病院連続中毒死事件でも、病院内での
管理体制が問題視された。

「病院は患者や見舞い客が自由に出入りできるうえ、監視カメラもない。
最も無防備で危険な場所です」
そう語るのは、元警視庁捜査一課管理官の横内昭光氏だ。


2004年、慈恵医大病院が全国で初めて「院内交番」と呼ばれる渉外室を
設置。
警察OBが常駐して院内を監視するシステムを立ち上げた。

その際に、“院内ポリス第1号”として勤務したのが横内氏だった。
基本的に平日朝9時~午後5時の勤務だが、緊急の場合には深夜でも病院に
駆けつけたり、電話で対処法を指示したりするなど、24時間体制で病院
での“事件解決”に当たる。

現在、こうした院内交番を設置している病院は全国に約300ある。

病院内は生死の狭間にいる患者たちの不安や、時間が思う通りにならない
苛立ち、多忙な医師や看護師たちのストレスなどが鬱積し、人の感情が爆発
しやすい場所という側面もある。
そうした危険があるからこそ、院内ポリスは生まれた。

現役の院内ポリスとして活躍する井上眼科病院の金子純氏はいう。
「病院のスタッフは皆、私のPHSの番号を知っているので、院内で何か
トラブルが起こると私に連絡が入り、現場に駆けつけます。1日に何回か
院内を巡回するのも大切な仕事。巡回中、床にゴミが落ちていないか、
遮光カーテンに不備はないか、補助椅子が出しっぱなしになっていないか
などもチェックする。細かな点にも職員の目が行き届いていることを
確認することがトラブルの芽を摘むことになるからです」

院内ポリスの心が休まる日は、まだ遠い。


(週刊ポスト2018年8月10日号)


http://news.livedoor.com/article/detail/15095327/




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