[バイオレットライトと近視対策]
(家庭の医学 2018年7月27日)
<上手に浴びるには>
太陽光に含まれている「バイオレットライト」をご存じでしょうか。
屋外で過ごす時間が長いほうが近視になりにくいといった研究が進められて
います。
近視の進行を抑制する遺伝子とバイオレットライトが深く関わっていることが
わかってきました。
太陽光には波長によって肉眼で確認できる可視光と、見た目で確認できない
不可視光があります。
可視光は波長の長い赤から短い紫、約830~360nm(ナノメートル)までの
波長で七色、いわゆる虹色に識別できます。
赤よりさらに長い波長は赤外線、紫よりさらに短いものが紫外線で目には
見えない不可視光です。
バイオレットライトは紫外線の手前で、可視光の最も波長の短い部分
約360~400nmの紫色の光のことをいいます。
慶應大学医学部眼科教室の研究グループは、近視の進行を抑制すると考え
られている遺伝子EGR1とバイオレットライトとの関連に注目し、
バイオレットライトが眼内に入るとEGR1が活性化することを突き止め
ました。
13~18歳の若者による調査で、バイオレットライトを通過させるコンタクト
レンズを使用したほうが、通過させないコンタクトレンズを使用したときと
比較して、近視の進行の目安になる「眼長軸の伸び」が抑制されたそうです。
研究チームでは成人に対しても、強度近視患者で有水晶体眼内レンズを挿入
する手術を行った人を対象に、バイオレットライトを通過させる眼内レンズと
通過させないレンズを使用した場合の、術後5年にわたる比較調査を行い
ました。
その結果、成人においてもバイオレットライトは近視の進行抑制に有効で
あると発表しています。
これまで、屋外で過ごすと近視になりにくい、外遊びの時間が長い子どもの
ほうが近視になりにくいといった論文等は多数発表されてきましたが、
その理由について解明されていませんでした。
今回の研究結果は、これを裏付けるエビデンスとして注目されています。
バイオレットライトを効果的に浴びるためには、1日2時間程度屋外で
過ごす、室内ならば窓辺で過ごす、眼鏡ははずす、というのが専門家の
意見です。
直射日光でなく日陰でも曇りの日でも大丈夫です。
ただし、日当たりがよくても窓を閉めた室内では、その恩恵を受けることは
できません。
窓ガラスやメガネレンズは紫外線をカットするために、紫外線のすぐ隣の
波長のバイオレットライトも一緒にカットされているものが多いためです。
バイオレットライトの研究に伴って、紫外線はカットしてバイオレット
ライトは通過させるメガネレンズも市販されるようになってきています。
メガネ着用者は上手に利用するとよいでしょう。
(監修:梶田眼科院長 梶田雅義)
https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125354/
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