大昔の男性大量死とY染色体のボトルネック

[大昔に世界中の男性が大量死していた理由が
                    遺伝子の研究で明らかにされる]

(GIGAZINE/ギガジン  2018年6月14日)


約5000年前~約7000万年前の間にアジア、ヨーロッパ、アフリカに住む
男性の大半が死亡している時代があり、女性17人に対して男性が1人しか
いなかったことがわかっています。

「なぜ、このような状況に陥ってしまったのか?」という疑問に多くの
研究者を悩ませることになりましたが、スタンフォード大学で遺伝学の教授を
務めるマルクス・フェルドマン氏らの研究で理由が明らかにされました。


1人の男性に対し、17人の女性しかいなかったという異常とも言える
「Y染色体のボトルネック」が発生していたという事実は、2015年に
エストニアのタルトゥ大学の研究で示されて以来、多くの研究者がその理由を
調査していました。


この現象が「Y染色体のボトルネック」と表現される理由は、男性が持つ
Y染色体の特徴から来ています。

人間の体細胞には23対の染色体があり、23番目の対の組み合わせで性別が
決まります。
女性であれば2つのX染色体を有し、また、X染色体とY染色体を1つずつ
持っていれば男性になることがわかっています。
また、子どもは両親から染色体を1つずつ継承しますが、Y染色体に関しては
男性からのみ受け取ることになり、突然変異することがなければ、祖父から
父、父から息子とY染色体が受け継がれても、Y染色体が変化することは
ほとんどありません。

このため、男性が大量死すると、死んだ男性の分のY染色体がなくなること
から、この現象が「Y染色体のボトルネック」と呼ばれています。


タルトゥ大学の研究では「Y染色体のボトルネック」が起きた理由として
2つの仮説が挙げられており、1つは「生態学的な要因や気候的な要因による
もの」、もう1つは「当時の男性は社会的に権力があり、子どもを大量に
作りすぎたために大量死が起きたのではないか」というものでした。



しかし、フェルドマン氏は、1:17の男女比はあまりにも極端すぎるため、
これら2つの仮説では説明できないと指摘。

そこで、研究チームは当時の集団内で起きていた状況を調べるために
「Y染色体の突然変異」や「異なる種族間の戦争」「自然死」などの18通りの
仮説を立て、それぞれの仮説でシミュレーションを行いました。

これらのシミュレーションを通して、最も有力な仮説となったのが、
「集団間で戦争が行われており、負けた集団の男性が皆殺しにされた」という
説です。
片側の集団の男性が全員殺されることになれば、殺された人数分のY染色体が
失われることにつながり「Y染色体のボトルネック」の理由としても成立
します。

また、当時の女性には、同様のボトルネックが発生していなかったことが
ミトコンドリアDNAの分析から明らかになっています。
この事実について、フェルドマン氏は過去に植民地化された地域の歴史に
なぞると説明がつくとしており、「集団内の男性は全員殺されるが、女性は
勝利した集団に移動することで生き延びられる傾向にあります」と述べて
います。


イギリスのサンガー研究所の進化遺伝学者であるクリス・タイラー・スミス
氏は「Y染色体のボトルネックについて、タルトゥ大学の研究では合理的な
答えにたどり着くことができませんでしたが、スタンフォード大学の研究で
示したボトルネックが戦争によるものであるという仮説は合理的なものに
なっています」としており、フェルドマン氏らの研究チームが示した仮説が
有力であると考えています。


フェルドマン氏は「Y染色体のボトルネックがあった時代以降は、人類が
都市のような大きな社会を形成するようになったことで同様の争いが減り、
Y染色体の多様性が復活しています」と述べています。


http://news.livedoor.com/article/detail/14861359/


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[関連ページ]


ミトコンドリア・イブとY染色体アダム 


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