大腸を旅した歯ブラシ

[Dr. 倉原の”おどろき”医学論文【第118回】大腸を旅した歯ブラシ]

(ケアネット  2018年7月6日)


歯ブラシをくわえたまま遊んでいる子供がいると「ケガするよ!」と
怒鳴ったりします。
咽頭の奥に刺さったりしたらタイヘンですからね。


しかし世の中には、とんでもない歯ブラシ論文が存在するのだ。
論文タイトルもなかなか文学的です。
「飲み込んだ歯ブラシ、大腸への旅」。
映画化しそう。


13年来の統合失調症のある31歳の男性が、1週間続く上腹部痛を訴えて来院
しました。
激痛というほどではなく、中等度の痛みで、軽い嘔気を伴っていました。
かかりつけのドクターに診てもらったところ「軽い胃炎ですね」とでも
言われたのか、制酸薬などを処方されただけでした。
薬では痛みが治まらず、次第に熱も出るようになりました。

来院時の体温は38.1℃。
血液検査で白血球が上昇しており、トランスアミナーゼも軽度上昇して
いました。
膵炎を示唆するような逸脱酵素の上昇はありませんでした。

はて、この腹痛と熱の原因は何だろう?
腹部画像検査を行いました。
主治医は腹部CTを見て、驚きました。
上行結腸に、何か異物がある!

しかも、異物のせいで腹腔内感染症を起こしているようでした。
これはいかん、大腸内視鏡で見てみよう、ということでカメラを入れると、
モニター画面にとんでもないものがあらわれました。

大腸壁を突き破った歯ブラシ。

上行結腸だから、さすがに肛門から入れたわけではないだろうし、
あれ? この歯ブラシはどこから来たんだ?
そう思いながら、処置を進める主治医。

術後、患者によくよく尋ねてみると、歯ブラシを飲み込んだことがあることを
告げられました。
へー、やっぱり口から飲み込んだんだね、じゃあいつ頃それを飲み込んだの
か。
1年前。

なんと、1年前に彼は歯ブラシを飲み込んでしまっており、近くの病院で
「こりゃあかん、手術やで!」と強く説得されたことがあるらしいのです。
彼はそれをかたくなに拒否し、1年後腹痛を起こして来院したのでした。



http://www.carenet.com/report/series/internal/kurahara/cg002023_118.html?utm_source=m15&utm_medium=email&utm_campaign=2018070203




No tags for this post.
カテゴリー: せ精神科, のど(咽喉),  嚥下・嚥下障害 パーマリンク