長針と短針で時刻を読めない中高生激増 イギリス

[長針と短針で時刻を読めない中高生激増
              イギリスの教室から姿を消すアナログ式時計]

(Techinsight  2018年5月1日)


もう何年も前から言われてきた「イギリスの子たちは針と文字盤による
アナログ式時計では時間がわからない、読み取れない」という問題。
ついに教室からアナログ式時計を撤去し、かわりにデジタル式時計の導入を
始める学校も現れたようだ。


小学校高学年になると「時刻の確認は携帯電話で」となってしまっていると
いう今のイギリス。
アナログ時計の文字盤では正しく読みとれないというショッキングな事実が
5年以上も前に判明していた。

そのせいで子供用に販売されている針と文字盤からなるアナログ時計の
売り上げは激減。
デジタル式表示の腕時計ばかりが売上げを伸ばしているそうだ。

そして3月、教育関係者がロンドンに集まって開催された「Partners in
Excellence」の会議でまたしてもその話題が登場したもよう。
事情はさらに悪い方に向かっていることを『Sky News』などが伝えている。


なぜ今時の子はアナログ式時計が読めないのか、そんな憤りを教師たちが
議論していた時期はすでに去ったのであろう。

このたびの会議では、「時計が読めないことはすでに切実な問題となって
いる」「わが校ではやむを得ずこんな決断を下した」といった議論がなされ、
ついにアナログ時計を撤去してデジタル時計を設置する学校が現れたことも
紹介された。

ある地区のニコラ・タウルさんという教師が「10・11年生(日本の中3・
高1)、シックス・フォーム(日本の高2・高3の2年間)においてアナログ
式時計を正しく読み取れない子がどんどん増えており、私が勤務する学校では
すべてをデジタル式時計へと替えました」とつぶやき、困ったものだと
嘆きながらも、やむを得ないと同意する他の地区の教師たち。

長きにわたり時計の読み取りは小学校におけるひとつの大事な教育で
あったが、パソコン、スマホの普及によりその機会の重要性は奪われて
いった。

また、シェリル・クインさんというある地区の教師も「真剣そのものの試験で
ありながら、教室の時計の読み方がわからない子がいる。この問題は数年前
から感じていました」と語ると、各学校長により組織されるASCL
(Association of School and College Leaders)のマルコム・トローブさんは
「今の子たちは伝統的な文字盤や針で時刻を読むほど賢くないのですよ」と
嘆く。
デジタル時計に替えるメリットはただひとつ。各種試験において生徒たちが
ストレスを感じることなく試験に集中できることだが、トローブさんは
「試験の最中に時間がわからなくて困るなどと訴えるようでは先が思い
やられる」と言いたげだ。

そして保守党員の下院議員で教育特別委員会「Commons Education
Committee」の議長を務めるロバート・ハーフォン氏は、その流れに妥協
してしまうことについて「ある種の危機感を覚えます。それでもすべての
子供たちにアナログ時計の読み方を教えるべきだと私は思いますね。時計から
数字を学ぶことはとても重要なことですよ」と語る。
時間という数字の持つ独特な秩序、世界時計の仕組み、そんなものを知るには
やはりアナログ式時計に接することが一番。

たとえばテスト終了時刻が11時15分で現在10時48分だとしたら、アナログ
時計を読める者なら一瞬にして「残りあと30分弱」と理解できる。

しかも世界を旅すればアナログ時計ばかりという国もザラで、文字盤・長針・
短針で時計を読めるようにしておく方が楽しいこともある。

ロンドンといえば、文字盤にあるローマン体の数字がそれは美しいウェスト
ミンスター宮殿(英国国会議事堂)の時計台“ビッグ・ベン”が有名である。
こういう素晴らしい財産がありながら「時刻はやっぱり数字で表しても
らわないと」とは実にもったいない話である。


なお、教師たちがここでこだわっている真剣なる統一試験とは「GCSE」と
「Aレベル」のこと。
義務教育(5歳~16歳)を修了するとGCSE(General Certificate of
Secondary Education)という統一試験を受験するもので、大学進学を考えて
いる者は8~10科目を受験する。
またAレベル(General Certificate of Education, Advanced Level)とは、
GCSEに続くシックスフォームという2年間の高等教育で得意な3~5科目を
勉強した者が受ける統一試験のことである。
アナログ時計が読めなくて大学受験、学力試験もないだろうという気がしない
でもないが、それは言い過ぎであろうか。



(TechinsightJapan編集部 Joy横手)



http://news.livedoor.com/article/detail/14656066/





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