新潟県教育委員会:過労に倒れた難病の妹 遺族が公務災害申請

[<新潟県>過労に倒れた難病の妹 遺族が「公務災害」申請]

(毎日新聞  2018年4月23日)


<「骨形成不全症」患う 識者「障害への配慮不足」>
新潟県教育委員会の女性職員(当時42歳)が月125時間の時間外労働後の
1月、職場で倒れて死亡した問題で、女性は先天性の難病「骨形成不全症」を
患い障害者枠で採用されていたことを遺族が22日明らかにした。

遺族は死亡したのは過酷な労働環境が原因だとして民間の労働災害に当たる
「公務災害」を地方公務員災害補償基金新潟県支部に8日付で申請した。
(井口彩、南茂芽育)


「積もり積もった疲労に耐えられなかった。無念だったろう」
毎日新聞の取材に応じた県内に住む女性の兄(46)は、妹の姿が映し出された
スマートフォンを見つめて、そう語った。

女性は転んだだけで骨折するほど骨がもろく、成人後も身長140センチほど。
入退院を繰り返しながら松葉づえをついて必死に生きてきた。
「我慢強い、本当に頑張り屋」
努力する妹の姿を見て、自身も自然と障害者支援の仕事を選んだ。

2人でよく旅行したが、妹が県教委に異動後、「休みがとれない」と会う
回数が減った。

昨年末実家に帰省した際も「頭が痛い」と横になっていたという。

1月3日には「友達と約束があるから」と実家を出たが、県によるとその日は
出勤だった。
「親に心配をかけたくなかったんだろう」
妹がついた優しいうそだった。


そして5日、自身のスマホに母から着信が入った。
「娘が倒れた」
病院に駆けつけると、医師に「覚悟を」と告げられ、3日後の午後6時58分、
眠るように息を引き取った。


後日、妹が1人暮らしをしていた新潟市内のアパートを訪れた。
洗濯物は脱ぎ散らかしたままで、トイレには嘔吐物が残されていた。
「あの日も気分が悪いまま出勤したんだろう」
立ち尽くすしかなかった。

毎朝、両親がすすり泣く声で目が覚める。
「職場に行くなと引き留めておけば」
両親は今も自分を責め続けているという。


兄は「妹が亡くなってから、後任には2人が配属された。
人手が足りないと分かっていたならば、なぜ妹を助けてくれなかったのか」と
語り、スマホに映る妹の頭をなでるようにそっと触れた。



<骨形成不全症>
国が指定する難病の1つで、先天的に骨がもろく、身長も伸びづらい。
2万~3万人に1人の割合で発症し、全国に約6000人の患者がいると
される。



<死の前月、時間外労働は「過労死ライン」上回る125時間>
女性は1999年の大学卒業と同時に県に入庁。

2015年、高校教育課の奨学金受け付けや審査担当として着任すると多忙に
なった。
女性が県に提出した自己申告記録によると、月の時間外労働は昨年4~12月は
平均70時間超。
11月は99時間、
12月に至っては厚生労働省が定める100時間の「過労死ライン」を上回る
125時間に。

今年1月5日正午ごろ県庁の自席で意識が混濁し、搬送先の病院で8日、
くも膜下出血のため死亡した。


障害者雇用促進法は雇用主に対し「障害の特性に配慮した必要な措置を講じ
なければならない」と規定。
県教委は取材に「重い物は持たせないなどの配慮はしていたはずだ」と
したが、長時間労働への配慮については「現場の自主性に任せていた」と
明確には答えなかった。

県は24日、女性の死因に関する調査報告書を公表するが、障害の事実に
ついては個人情報の保護を理由に触れない方針だ。


過労死防止法の制定に関わった関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は
「障害に配慮せず過酷な労働を強いたことが死を招いたとは十分に考え
られる。健常者ですら長時間労働が問題になる時代。県は障害者への配慮を
欠きすぎた」と話している。


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180423-00000006-mai-soci


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